怒りメーター ページ26
「それが私の生き方だから。私は、そりゃたくさん後ろ指差されて、傷付きもしたけど。でもね、その分私は誰よりも自由なの。みんな私になんて興味がない。私が何してようと誰も口を出さない。関わってさえくれない」
『ああ。まるで空気みたいに、無関心』
「何か自分に不都合があるとすぐ私のせい。ねぇ、寂しいのよね？」
誰よりもお互いの心を感じ取れる。彼が生きていればもしかしたら2人は友だちになれていたのかもしれない。
『家族はいるのか？』
彼の顔が柔らかくなっていた。きっとそれが本当の彼の顔なのだろう。
「家族はいない。でもね、私を妹のようにかわいがってくれる優しい兄貴分がいる」
『なら、お前は大丈夫そうだな』
「心配してくれてありがとう」
『俺はもう行くよ。怪我、悪かった』
「大したことないから大丈夫だよ」
彼は静かに涙を流していた。まだ10代前半で無情にもその人生の幕を閉じた少年は優しく笑っていた。
『じゃあな、お人好し。幸せになれよ』
スゥ、と霊の輪郭が崩れ、消えていった。寂しかったのだ。だから、司咲が見えている人間だと知って、過去を思い出して悪意に染まってしまった。本当は心優しい少年だったのだ。
パッと電気がついた。不意にめまいがしてその場にしゃがんで目を閉じる。結界術を使うとやはり体力の消耗が激しい。
ぐいっと腕を掴まれた。
「なんで怪我してんの？」
ちらりと見上げると真顔の基裕がいて、サッと血の気が引いていった。
「いや、あのね！」
「言い訳じゃなくて理由を聞いてるんだけど」
絶対零度の視線。かなりご立腹だ。
「…ごめんなさい」
俯いて司咲は謝った。無茶した自覚もあるし、基裕が怒る理由も分かる。だけど、同じだったのだ。
服をめくれば、血が出ている割には傷は浅かった。
「つばさ、頼む。俺、ちょっと衣装脱いでくるわ」
「分かった。任せて」
「え"っ」
快く引き受けるつばさに司咲は嫌そうな声を出す。
「何か問題でも？」
「……ありません」
「すぐ戻ってくるから待ってな」
声は優しいのに、顔は全然笑っていない。怒りメーターMAXだ。背中を氷塊が滑り落ちたような心地だ。
刀剣男士たちを引き連れて衣装を脱ぎに行く基裕を見送って、司咲はため息をついた。
「腕、見せて」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
