6話 あの人の存在。 ページ7
「おいッ！！今二軍の試合にクリスが出場してるぞ！！！」
「…ッマジで？？」
3年の先輩が物凄い剣幕でトレーニングルームに入ってきたかと思えば…そりゃその顔になるわな…
てかクリス先輩肩大丈夫なのか、？いや、それよりもこの状況をまずは御幸に…
「ってあれ！？おい倉持、御幸どこいった？？」
「いや…俺も探してたんだけどよ、」
辺りを見渡すが、先程まで俺のすぐ隣にいた御幸が忽然と姿を消していた。
おいおい、こんな良い場面の時にどこいった？トイレか？？
「あの人ならもう出ていきましたよ。誰よりも早く…1番に」
そう入口に視線を向けながら答えたのは降谷だった。
いやいやいや、誰よりも早くって言っても…流石に速すぎだろ？？あいついつ人間辞めたんだよ…
「倉持は行かなくていーの？」
「あ？俺は別にいいよ。ブランクがあろうと、あの人の実力は分かってるつもりだしな。」
「ふーん。じゃ、俺は行ってくるわ」
消えてしまった御幸の後を追いかけて、俺は二軍の皆の所へ向かった。
グラウンドに着いた時には、外野がザワザワと騒ぎ始めていて、俺だけが全く状況を掴めていない模様。
「なにこれ？どういう状況？」
置いてけぼりは寂しいので、近くにいたチームメイトに何が起こったのかを尋ねてみる。
「沢村の暴れ球のせいでノーアウト満塁の大ピンチだったんだけどよ、キャッチャーがクリス先輩に変わった途端、試合の流れが…」
…成程。
まあ確かに、今の沢村を扱い切れるのは御幸かクリス先輩だけって所だろうしな。
呆然としながらも試合状況を教えてくれたチームメイトにお礼を告げ、御幸を探しつつ流れが一変し始めた二軍の試合を観察していた。
「…あ、御幸！ここに居たのか」
「ん？ああ、A」
「クリス先輩はどうよ？」
「っ、やっぱあの人はああでなきゃな…！」
新しい遊びを見つけた子供のように、目を輝かせて楽しそうにする御幸。
…御幸にこんな顔させられるなんて、ちょっとクリス先輩がちょっとだけ羨ましいかも。
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作者名：ぜんざい | 作成日時：2023年8月1日 21時
