5話 未来の好敵手。 ページ6
「うわ…降谷ってバッティングも出来んの…？」
「お前より飛距離出てんじゃねェ？(笑)」
驚愕する俺の表情を見て、ケタケタと他人事のように笑う倉持。
いや、マジで本格的に怪物じゃんあいつ…
でも凄い不服そうな顔しながら打ってんなあ。バッティング練習じゃなくて、投げたくてうずうずしてる、って顔全面に出過ぎだろ(笑)
しかも隣で完璧に打ち分けしてんのって春市だよな…？
「おい倉持。今年の1年、マジでどうなってんの？」
「まあ、まだ亮さんには及んで無ェけどな」
御幸はともかく、こいつもこいつで亮さん信者だったの忘れてたわ…
入部当初はめちゃくちゃ亮さんの悪口言ってたのになあ。
「ところで沢村は…」
バッティング練習には姿を見せていない沢村。
投げさせては貰ってないだろうな、とは思いつつも辺りをキョロキョロと探してみる。
「…お、アイツいい練習してんじゃん」
そこにはグラウンドの隅っこでシャドウピッチングをしている、珍しく真面目な顔をした沢村。
まあ恐らく監督かクリス先輩辺りの入れ知恵だろうな。
…そっか、そうだよな。
あいつは本気でエースの座を取りに来てるんだっけ。
「(…這い上がってこいよ、沢村)」
同じ投手としてのライバルが増えるかもしれないってのに、何となく嬉々とした気持ちが湧き上がってくる。
何だろう、高揚感っていうの？沢村の可能性と成長に、1野球人として、ワクワクしてる感じ。
「…んでそんなニヤついてんだテメェ。何企んでやがる。」
「企んでねえよ、俺はただ後輩の成長を願う優しい先輩だっての！」
「お前が優しい先輩ってタマかよ。他人にあんま興味無ェくせに」
「えぇ…俺そんな冷たいやつだと思われてんの…？」
何を今更、みたいな表情をみせる倉持に少し落ち込むが、倉持の顔が冗談には感じなかったので、もっと人に優しく生きていこう…と心に誓った俺だった。
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作者名：ぜんざい | 作成日時：2023年8月1日 21時
