9話 一球入魂。 ページ11
「…分かった。ただし、俺の言うことに従わなかった、もしくは違和感、怪我を隠した場合。お前とのバッテリーは即刻解消だ。監督にも報告する。それでいいな？」
「っ、お、おう」
御幸の目は本気だった。
俺が少しでも約束を破ろうものなら、お前の事なんて見捨てる、とでも言う様に全てが見抜かれてるような、そんな心地がして、身の毛がよだつ感覚を覚えた。
一見分かりづらく見えるけど、これは御幸なりに俺の決して強いとは言えない身体を心配しての事なのだと思う。
そんな御幸の態度が、余計に俺の気が引き締めてくれた。
だからこそ、裏切るような行為は絶対に出来ない。
「じゃ、まずは普通のスライダーからな」
そう言うと御幸はボールを俺の胸にとん、と小突き、少し離れた所で構えの体制に入る。
俺は御幸から受け取ったボールを三本の指で握り直し、深呼吸をした。
…御幸に捕ってもらうの久々だから、ちょっと緊張すんなあ、なんてらしくない事も思ってみたり。
「A！まずはこっちな」
外角ギリギリにミットを構えた御幸を見て、それでこそ青道高校の正捕手だよな、と俺の口角が自然と緩む。
たとえ練習でも1球目から超強気のリード。審判によってはボールになる可能性のあるクサい所。
それくらい本気で向かってこい、という解釈で良いのだろう。
ま、それに応えるのが俺達ピッチャーの仕事だもんな？
「やってやろうじゃん、
一也サマの仰せのとお、っり…ッ！！」
一点を目掛けて投げ混んだ渾身の一球は、爽快な破裂音を鳴らして、御幸のミットに吸い込まれるように収まった。
「…ナイスボール！」
聞きなれた褒め言葉のはずなのに、思わずガッツポーズをかましてしまった。
「っ、たりまえよ」
「いやー、やっぱ俺、お前が投げてる時代で捕手出来て良かったわ」
「ッ、オイオイ。お前も大概じゃねえか、恥ずかしいセリフさらっと言いやがって！！」
「はっはっは、照れんなよA♡」
「照れてねーわ！！ホラ！早く構えろクソ寒男！！」
「ええ、すげえ暴言…(笑)」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぜんざい | 作成日時：2023年8月1日 21時
