19.“剣林弾雨” ページ19
「わー…なんとも古めかしい」
「うははっ、めっちゃボロッボロ!」
ここがこれから私達がお世話になるクラスか、と、まるで学校の怪談に出てくる旧校舎のような教室を眺め、私は少しだけわくわくしていました。
悪魔、魔獣等々、バリエーションに富んだ様々な種族が入り乱れているこの魔界ならば、或いは本当に幽霊の類も存在しているかもしれない、なんて。
『……待て、A』
「えっ?」
『中に悪意を感じる。』
さあ入ろう、と足を踏み出そうとしたはいいものの、シアに引き留められてしまいそれはただの足踏みになりました。
そうこうしている間に入間くんが一番最初に教室の戸を開けてしまい、あとは入間くんの超人的な能力を、見ているだけでした。剣林弾雨とはまさにこのことか、と、まるで他人事のように考えながら。
…これが、魔界。
『…大丈夫か、A』
「、…はい。少しだけ、びっくりしましたけど」
『私がお前を守る。そう気負う必要はない』
「…ふふ。シアはいつだってかっこいいですね」
幽霊ももしかしたらいるかもしれない、なんて。私は魔界で暮らすということを軽視していました。人間の常識は悪魔には通用しない。根本的に常識の異なる場所。
…あんなに息巻いて死地へ出向いたとしてもまた帰ってこよう、なんて。
「A、ダイジョーブ?」
「!あ、大丈夫ですよ。少しぼうっとしていただけで」
「…そうは言うが、お前…顔色が悪いぞ」
どうして、戸を開ける前はあんなにわくわくしていたのに、どうして今、私、こんなにも動揺して、
『お前の魔力循環は未だに不安定だと、言っただろう』
ぐらぐらと視界まで揺れ始めた最中、すんなりと彼の声は私の頭まで届きました。
身体をひょいとシアに抱き上げられ、彼は私に気付かずに入間くんを持て囃すクラスメイト達をスルーして教室に入室します。私はくるくると、彼から掛けられたその言葉を反復していました。
私はまだ悪魔になったばかりで、だから、人間から悪魔に身体が再構築されたと言っても、それが定着しきったわけではない。そもそもが魔力の暴走が発端だった、から。
『…お前が望み喜ぶならと、私もお前の提案を受け入れた。その結果私とお前はひとつとなった、が…不安定だった魔力循環に負荷を掛けたのだ。』
「…私、今…体調不良、なんですね。」
『人並みの言葉で言うなら、そういうことだ』
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ako(プロフ) - 最高すぎてやばいですえ、すきです。脇役のこの子可愛い!!!更新頑張ってください!応援してます!!! (2020年5月19日 17時) (レス) id: 444283ccfe (このIDを非表示/違反報告)
脇役(プロフ) - チョコレートさん» あんまり褒められちゃうと私調子乗っちゃうから程々がいいんですよ!←ありがとうございますwまったり続編をお待ちいただければ幸いです! (2020年2月1日 19時) (レス) id: bd1474991a (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート - え、好き(唐突)ヤバイすごい無理面白い(語彙力)ゲホン…初コメの初っぱなからスミマセン…これから更新頑張ってください!応援させて頂きます! (2020年2月1日 15時) (レス) id: dcdae6c8af (このIDを非表示/違反報告)
脇役(プロフ) - 藤の花さん» そんな私率直な言葉に弱いんです////すいませんありがとうございますw設定の盛りっぷりには賛否あるかと思いますが、楽しんでいただけたようで何よりでした!ぼちぼちやって参りますので、続編もお楽しみに☆( (2020年1月28日 15時) (レス) id: 0706dee424 (このIDを非表示/違反報告)
藤の花 - 脇役さんに惚れました(直球)すごい設定も物語もつくりこまれてて、一話一話ワクワクしながら読ませていただきました。お体に気をつけて自分のペースで更新頑張って下さい!続編楽しみに待っています! (2020年1月28日 15時) (レス) id: 17c70a6373 (このIDを非表示/違反報告)
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