6話 ページ6
．
「ここで良いかな？」
「あ、はい、ありがとうございます…。」
律儀にぺこりと無一郎にお辞儀をするA。
もういっそのこと自分の屋敷に連れて帰りたいと思った無一郎だった。
緩っ緩になりそうな頬をなんとか微笑み程度に押えながら無一郎はAの顔を覗き込んだ。
「頭なんて下げなくて良いよ。僕がやりたくてやったんだし。」
悪戯っ子のように微笑む無一郎はそれはそれは可愛い。絶対にこいつ生まれてくる性別間違えてる。
「あ、えっと、はい。」
気恥ずかしそうにするAはちらりと無一郎を見上げる。Aの方が背が小さいので必然的に上目遣いになるのだが。
無一郎はその無意識上目遣い攻撃を受けて三回くらい失神しかけた。効果は抜群。
「…僕の方こそ(癒しを)ありがとう…。」
「…え？」
「あ、何でもないよ。こっちの話。」
危ない危ない。危うくちょっと惚れ込み過ぎていることがバレるところだった。
ふぅ。
「あ、ねえ暇な日とかってある？」
「は、は、はい…？」
無一郎は左手で額を押さえつける体制になった。
可愛すぎるでしょこの子、と現在進行形で悶えているからである。
そんな様子の無一郎を見てAが慌てふためく。
「具合…悪いんですか…？屋敷の中で休みますか…？」
「いや良好だよ絶好調。」
「なら、良いんですけど…。」
心配そうな表情を浮かべながらもほんの少しだけ綻んだ微笑みを見せると、無一郎の心臓はいつもの八倍の速度で波打ち始めた。
今なら血管と流れる血で摩擦からの火が起こせそう。
「ところでそれっていつ？」
「えっ、と…明後日です…。」
「じゃあ一緒に出掛けよう。」
「え、え？」
(Aの中では)初対面の人にいきなり明日出掛けようと言われてうん、と頷けるほどAは警戒心がないわけじゃない。てか普通の反応。
しかし残念ながら恋の病に侵された無一郎はそれに気づけない。
「駄目、かな…。」
眉を下げて残念そうな顔をするとAはあわあわと手を振った。
「いや、その、ええと…。」
自分の言葉に困っている姿すら可愛く見える。
無一郎の恋の病はどうやら既に末期を迎えているようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 939人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピクルス - 号泣 (2020年9月9日 14時) (
レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
ピクルス - うわぁぁぁぁぁぁぁあん！無一郎くん死なないでぇぇぁえぇぇぇぁあぇぁあええ (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - わたぬきくん。さん» お祝いのお言葉ありがとうございます！そのように言って頂けて嬉しい限りでございます！最後までお付き合いくださりありがとうございました！ (2020年8月30日 10時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
わたぬきくん。(プロフ) - テスト期間終わってきたら完結してた…ああもう号泣です！完結おめでとうございます！(泣) (2020年8月29日 14時) (レス) id: 9e97a6dad3 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - リムさん» お祝いのお言葉と応援のお言葉ありがとうございます！そのように言って頂けて光栄の極みでございます…！本当に感謝の限りです。最後までお付き合いくださりありがとうございました！ (2020年8月27日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白霞
| 作成日時：2020年7月23日 20時
