検索窓
今日:18 hit、昨日:109 hit、合計:462,673 hit

44話 ページ44

.






「A」



あの子の声がする。見た目がとっても中性的で。女の子という割には低い声のあの子。





彼女は__彼は、私の光だった。





私はしのぶ姉様やアオイ姉様ほどの医学に関する知識があるわけじゃない。けど、毎日毎日たくさんの人達の手当をしていたから、男女の身体の造りの違くらいなら何度も見ればわかってしまう。

“むいちゃん”と名乗ったあの女の子は、本当は男の子なんだって。



薄々勘づいてはいた。でも、怖かった。真実を知ってしまうのが。

いつか怪我の手当をしていた時。疑惑は確信に変わった。





むいちゃんは男の子なのだと。





最初はショックだった。すごくすごく悲しかった。

でも、悲しかったのはむいちゃんが男の子だったからじゃないの。
嘘をつかれてたことが、悲しくて悲しくて仕方なかったの。



そのことを、しのぶ姉様に打ち明けた。
誰かにこの気持ちを理解して欲しかった。

自分でも不思議だった。
むいちゃんは“男の子”なのに、恐怖心とかそういう類のものは一切感じなかったから。
なんで、男の子なのに怖いと思わないのかが心底不思議でならなかった。





「私から言うべきことではないとはわかっていますが…これは良い兆しですからね…。Aが男性を好きになれるのかもしれない。あの子は…霞柱、時透無一郎。女の子では、ないんです。」




霞柱様。そんな雲の上の存在が、女の子と偽って私に近づいてきた理由なんてこれっぽっちもわからない。

でも、でも。貴方が少なからず私のことを大切に思っていてくれたことはわかっていたから。



いつの間にか大切になっていたこの関係を壊したくなくて、そのことについて貴方に聞くことはできなかった。





私ね、きっと。貴方に恋をしていたの。
これが恋だって確証はどこにもないけれど…間違いなく、これは“恋”というものだと思う。

貴方に会う度心臓がうるさくて。貴方のことを考える度に心がホワホワしたの。



「(伝え…たかったな…。)」



伝えたかった。貴方に私のこの止めどなく溢れてくる愛おしさを。愛を。



微睡む意識の中、ほんの一瞬の焼け付くような痛みと共に、私の命の灯火はあっけなく消えた。

45話→←43話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (796 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
939人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ピクルス - 号泣 (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
ピクルス -  うわぁぁぁぁぁぁぁあん!無一郎くん死なないでぇぇぁえぇぇぇぁあぇぁあええ (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - わたぬきくん。さん» お祝いのお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて嬉しい限りでございます!最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月30日 10時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
わたぬきくん。(プロフ) - テスト期間終わってきたら完結してた…ああもう号泣です!完結おめでとうございます!(泣) (2020年8月29日 14時) (レス) id: 9e97a6dad3 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - リムさん» お祝いのお言葉と応援のお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて光栄の極みでございます…!本当に感謝の限りです。最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月27日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月23日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。