30話 ページ30
「だから胡蝶さんも大切な人達の為に刀を振るってるんじゃないかな。
例えば、Aとか。」
無一郎はにこりと微笑むとAの頭にそっと手を伸ばした。
そしてAの柔い髪に触れると、優しく優しくその今にも泣き出してしまいそうな表情をした少女の頭を撫でてやった。
Aは驚いたようにばっと視線を上げる。
でも、その手を振りほどこうとはしなかった。
寧ろ、心地が良いのだ。その優しい温もりを感じられるこの瞬間が。
「……じゃあ」
ぽつりとAが声を出す。
なぁに?と無一郎が猫撫で声で問うと意をけしたようにAがゆっくりと顔を上げた。
「むいちゃんにとっての大切な人って、誰なの?」
その問い掛けに無一郎の肩が跳ね上がった。
顔に熱が集まってくるのがわかる。
心臓が早鐘打つ。全身に力が入るのがわかった。
Aからしたら何気ない質問だったのかもしれない。ただの好奇心だっただけなのかもしれない。
でも、その言葉は。無一郎を動揺させるには充分すぎたのだ。
「えっと…。」
無一郎は気恥しそうにぱっと視線を逸らすと、赤くなっているであろう顔を長い髪で隠した。
「…君って言ったら、どうする?」
結果、無一郎が発したのはこの言葉だった。
じわりじわりと全身がますます熱くなる。
ああ、ここで素直に“君だよ”って言えたら良いのに。僕の馬鹿。なんで言えないんだよ。
…僕は、君のことになるとヘタレになっちゃうみたいでさ。正直に、かっこよく言えなくて、ごめんね。
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ピクルス - 号泣 (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
ピクルス - うわぁぁぁぁぁぁぁあん!無一郎くん死なないでぇぇぁえぇぇぇぁあぇぁあええ (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - わたぬきくん。さん» お祝いのお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて嬉しい限りでございます!最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月30日 10時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
わたぬきくん。(プロフ) - テスト期間終わってきたら完結してた…ああもう号泣です!完結おめでとうございます!(泣) (2020年8月29日 14時) (レス) id: 9e97a6dad3 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - リムさん» お祝いのお言葉と応援のお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて光栄の極みでございます…!本当に感謝の限りです。最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月27日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月23日 20時