【完結】ハナミズキ２(実況者ポッキー)

５５ ページ5

自分でも驚いている
こんな事言うつもりなんて全くなくて
だけど出会ってしまったら…もうだめだった
加速する想いが止まらなくって
もう友達でいい、なんでもいい
ただただ大雅の傍にいたい、その笑顔を見ていたい
そう、おもってしまった

だから流れる涙も、落ちてしまった松葉杖も無視して
引き留めるのに必死だった
今を逃してしまえばもう二度と会えないような気がして
お願い、お願いだから傍にいてほしい
いなくならないでほしい

それだけで、私は…


「あれ…大雅さん？」


固まって動かない大雅
不安は募っていく一方で
だけど掴んだ手は離せないまま

そんな中、大雅越しに女の人の声が聞こえて来た


「大雅さんですよね？…久しぶり」


元気でした？
なんて、大雅の背後にいる私に気付いていない様で
その女の人は少しだけその声色に違和感を感じさせながら近づいてきた

敬語とタメ口が混ざったかのような
だけど違和感はそこではなくって
何だか少し気まずそうな、迷っているかのようなそんな声

私は固まってしまって
だけどその場の空気は一気に変わる

大雅は少しだけ間をあけて


「……ほんと、かったいね」

「なっ…」


くすり、と笑った
その声に私は目を開く
それは顔を見なくても分かったけど

ゆっくり見上げれば、角度的に見える

優しい、笑顔


「これが普通です、通常運転」


少し拗ねたようなそんな言葉
それすら仲の良さを表しているようで
それで私は全てを悟った

私はゆっくりと大雅を掴んでいた手を離す


「あれ、それ…」


大雅しか見えていなかったらしいその人は視線を下げて、落ちている松葉杖に気付き一歩前に
すると一歩下がった私と目が合った
驚いたように目を見開いて
私の顔は今涙でぐちゃぐちゃだから、当然の反応

彼女は私と大雅の顔を交互に見て
小さく「お、取込み中、ですか？」なんて呟いた
しどろもどろ、はっきりしない態度

何も答えない大雅を最後に見て、それを肯定と捉えた彼女は慌てて


「あ、あの…ごめんなさい！」


失礼しました！
なんて勢いよく頭を下げてそのままくるりと背を向けて走っていった
長い髪が揺れるのを目で追って
(…あれ、)
その手に握られているそれは、花束
それは分かる…けど、何だか見覚えがあるような…

(わからない)

花も、自分も、大雅も

だけどわかった事が一つだけある

５６→←５４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す