【完結】ハナミズキ２(実況者ポッキー)

その後１ ページ15

「はいこんばんは！サクッとおいしい、ポッキーです」


スマホから聞こえてくる声に耳を傾ける
選んだのは実写の動画で
大雅の顔が見られる、それ


「はぁ…」


その声を、姿を見て、ひとりで胸をときめかせている所です

私は大雅とお付き合いをはじめた

その事実だけでも胸がいっぱいになってしまいそうで
純粋にポッキーさんの動画を楽しんでいた数日とはまた違ったものに見えてくる
それがいい事なのかそうではないのか、判断しがたいけど
動画も好きだし、大雅も好き
そんな揺るがない事実を目の前に考えたた所で意味はないんだと考えて

…いや、そんな事本当は考えてない

だって


「すき…うん…好きだなぁ」


口角はずっと上がりっぱなしで
つまるところ私はとんでもなく浮かれているんだ

最初はただのお客さんで、ご近所さんで
それから友達になって、その後フラれて
…で、どういう訳か今では恋人同士

これが、にやけずにいられる？

好きなんだ、なんて言ったあの日の大雅の顔がもう忘れられない
頭の中で何度も何度も再生していて


そんな浮かれれている私がどうしてお休みの今
自分の部屋にこもって、本人に会わずにこうして動画を見ているのかというと


「イベント…行きたかったなぁ」


はぁ…と再び溜息を吐く

そう、今日は彼の所属する事務所のイベントの日、らしい
無知すぎて、何も知らなくて応募すらしていない
一方詳しい姉は応募こそしていたものの外れてしまったらしく
(今度からはちゃんとチェックしよう…)
なんて心の中でそう決意した

だから大雅は絶賛仕事中

もう夜だけど
終わってからもいろいろあるだろうし、何より疲れていると思うから
きっと今日は会えない
本当は毎日でも会いたい…なんて
そんな子供みたいなわがまま言えないし

だからこうして今日の動画を見て我慢する

この実写動画はきっと昨日かそれ以前に撮っておいたものなんだろう
ふざけて、馬鹿な事をして、だけど隠しきれない滲み出てしまっている優しさにますますにやけてしまう

にやける口角と、きゅんと高鳴る鼓動

とても強くクーラーの効いた冷たい部屋で
布団に顔以外の全身を包みながら座っている

だから本当の意味で、身も心も幸せで
僅かに感じている寂しさを打ち消すように見つめた

細い体、綺麗な指、マスクの上に覗く瞳



「はぁ…かっこいいなぁ」





「えー、本当？」

「っ、え」


それは、突然
耳元で聞こえた声

背後から布団ごと抱きしめられて

気配も何もなかった、それ
私は、


「きっ…

きゃぁぁぁああ！！！」

その後２→←最終回でした！作者コメント

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す