９８ ページ49
「…出かけるの？」
「ん、仕事」
ぽん、と頭に手を乗せて優しさを見せる割に
視線は一向に合わない
…あの日から暫くそんな日が続いている
私が仲間家に行く日はほとんど出て行ってしまうマホト
とても仕事が忙しい…らしい
家に居ても一人にはならない
故に、耕大の妹としての私にしかなれないまま
だから
「おかしい！」
「まぁそうなるわな」
ダン！とお酒の缶を机に叩きつける
そんな荒れた私に付き合ってくれてるジン君
夜、今日もマホトはいなくて
そして耕大も予定があっていない
更にこの家にジン君と2人きりになったタイミングで彼はお酒を買ってきていたから
自然な流れでこうなった
テレビはついていても、その内容なんて一ミリも見ていない
「何で、理由がわからない」
「あからさまに避けられてるもんな」
無視されている訳でも、会えない訳でもない
だけど触れられない
そんな絶妙な距離感
とても中途半端な現状は、マホトらしくないように思えてしまう
だけど、それを避けているというのならそれこそ身に覚えがない
何で私を避けようと思ったのか
「飽きたんじゃね？」
ぐい、と水の様にそれを飲み干しながら軽い口調で言われたそれは刺さるものがあったけど
それはすんなりとは飲み込めない
「そもそも…マホトに好かれてた訳じゃないのに、そんなこと」
付き合っていない、それはある種強みだった筈
私の想いを包み込んでくれると笑っていた
耕大の妹だからだとしても
大事に大事にしてもらって、教えを乞うようにその関係ははじまったのに
ぶつぶつと続けて呟くと、ジン君はそれも軽く笑って
「他に女でも出来たんじゃね」
なんて
鼻で笑った
その言い方は、本当にそう思っている訳ではなくただの軽口
だけど私の動揺を誘うには充分すぎて
「そんな…急すぎでしょ」
冗談を、仮に本当だと考えてみると本当にそれは急で
だけど恋愛なんて大体急だと思った
耕大も私も、現にとても突然に変わった
勿論それが全てだとは言わないけど、そんな場合もあるんだと思うと頭から否定はできない
それが本当だろうと嘘だろうと
現状を変えるきっかけにはなり得ないから
私は持っていたお酒を一気に飲み干して、新しい缶をあけた
「ペース早すぎ」
「ジン君に言われたくない」
「俺はほら、強いから」
「私もそうだもん」
急くように飲んで重たい瞼で彼を見ながら言う
お酒は確実に私から力を奪っていて
それでいい、なんて思っていた
今日はこの家から出るつもりがないから
…彼は、そんな企みを見透かすような笑顔で笑っていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやの - よかったです！！これからもじゃんじゃんコメントしますね｡ﾟ(ﾟ＾∀＾ﾟ)ﾟ｡ (2017年9月10日 11時) (
レス) id: fa8761fcb7 (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - あやのさん» 通知がきていなくて今気づきました！(＞＜)じゃんじゃんコメントが本当に意欲に繋がって助かります！(笑)これからも頑張りますね(＾＾) (2017年9月8日 23時) (レス) id: f1aa9eefcc (このIDを非表示/違反報告)
あやの - よかったです(;_;)しつこいぐらいコメントしてしまって大丈夫かなって思ってたので…笑これからもじゃんじゃんコメントしますね！！ (2017年9月6日 12時) (レス) id: fa8761fcb7 (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - らぶさん» アプリではなく、インターネットで占ツクにログインして頂き、設定からR指定を表示するという項目があったと思います！そうすれば私の作品一覧に「連載裏ページ」と出ますとでそちらからどうぞ(^^) (2017年9月6日 7時) (レス) id: 9c4e44a43b (このIDを非表示/違反報告)
らぶ(プロフ) - 裏ページってどこから探せばいいですか？ (2017年9月6日 7時) (レス) id: 7069f75504 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももた | 作成日時：2017年5月26日 1時
