至ってシンプル（ワタナベマホト）

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「もう見た？」

「ん？」


不安げな顔のまま唐突に聞かれたそれは意味がわからなかった
寝起きの頭とはいえ、それにしたって思い当たる節がない
首を傾げて耕大を見つめると深く深く溜め息を吐いていて


「昨日の夜、親方ここに来た？」

「え、」


質問の意図がわからなくて思わず聞き返してしまったけど
単純に聞かれている事は分かるから、素直に「前まで送ってもらったよ」なんて伝える
すると耕大は片手で頭を抱えてスマホを見つめた
そして私をちらりと見て…スマホと私に視線をいったりきたりさせて


「…これ」


悩んだ末に耕大は見つめていたそのスマホを私に渡した
受け取った私は寝起きの目を擦って、目を細めて見る
それは青い鳥のＳＮＳ
そこにズラリと並んだ文字は


「……え」


こういうの、見た事ある
私には全然関係のない世界の話だった
芸能人とか有名人によくある事

炎上、そのものだった

しかもその原因は


「マホトと…私？」


好奇、罵詈雑言、憶測、噂
様々な意見で溢れているそれは見ていられない
だけど目が離せない

その文字の中に出てくる画像には、私とマホトが写っていて
昨日マホトが送ってくれた所だとわかる
そこを盗撮されていた
画質は正直悪い、それでも間違いなく私達で


「ッ…」


慌てて自分のスマホを手に取ると、その画面は真っ暗なまま


「なんで、」


引っ張ればコンセントに刺さっていない充電器の先がついてきた
…つまり充電したつもりで出来ていなかったという事
それに引いていると耕大はその先をコンセントにさしてくれる
全く待たずに何度も電源ボタンを押して
パッと照らし出される画面

そこには着信が十件以上あった事を伝えていた
全て担当の人からで、どんどん現実味をおびていく
動画でもＳＮＳでもその話題でいっぱいで
家を特定した、なんて質の悪いものまであった
更には担当からのメッセージには、ライブにも支障をきたすかも…なんて

迂闊、その一言に尽きる

だけどまさかそんな…なんて気持ちの方が未だに強い


「嘘ぉ…」

「あーぁ、やっちゃった」

「ッ！！」


スマホの画面を食い入るように見つめていると背後から聞こえる筈のない音
耕大も驚いたようで、一緒に勢いよく振り返る








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