【完結】約束4(ワタナベマホト)

その後５(ポキさん編) ページ11

すると、


「た、大雅さん！！」


半分くらい閉まった所で、彼女はそう叫んだ

驚いて、俺は扉を閉める手を止めてしまう
だけど体はもう後ろを向いていて、振り返る事は出来なかった

だけどAちゃんはそんな俺の背中に向けて口を開く


「ありがとう…ございました！
優しくしてくれてっ…いまも、わたしは」


泣いているんだろう
震える声は切羽詰まっていて
だけど一生懸命に叫んでいた

なんで、気付いちゃうかな

こんな時ばっかりよく見てるんだよな


(かっこわるすぎる)


もうAちゃんの事を見る事はできなかったけど


「ほんと、ばかだね」


俺は少しだけ振り返って
顔を見られない程度に

そして口角をあげながらそう告げた


「…さよなら」


泣いているだろう彼女にそれ以上は何も言わなくていい、なんて
そんなつもりで俺は半分だけ開いたままの扉を完全にしめた
鍵もすぐにかけて

そして足は速く、自室へと向かう

ソファーに身を投げる様に横になる

気付かれたけど、それは格好悪いけど
それでもケジメはつけられたんじゃないかと思う

これで俺のずるさも許されればいいな

そう思いながら顔を隠すように両腕を置いた


「…はぁ」


あー、好きだ
好きだったな

叶わなかったけれど
意外も意外、割とすっきりとした気持ちで


また明日から頑張る
がんばるから


いまだけ


格好悪く泣くのも


今だけ、ゆるしてよ

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