第63話 ページ16
天馬「太陽！？」
天馬がすぐさま太陽のもとへ駆けつける。
同じように太陽のもとへ行けないことに悔しくて拳を固く握りつつも、シードという立場がバレないよう信じて待つしかなかった。
幸い、遠くで虎丸さんが医療班に指示を出していることが確認でき、とりあえずはほっと一息つく。
天馬といくつか言葉を交わしたかと思えば、新雲の選手二人に両肩を支えてもらいながら太陽が雷門のベンチの方へやってくる。
天馬「太陽…？はやく病院に行った方が…」
太陽「うん…でも、一言だけ…言わせて」
本当に体力がギリギリなのだろう。息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
だが最後の体力を振り絞って、しっかりと『こちら』を見て言葉を続けた。
太陽「…絶対病気を治してみせる。そしたら、また会いに来るから、本気でサッカー…やろうね」
そう言ってふわりと微笑む顔には疲労が浮かんでいたが、確かな決意が見られた。
救急車が到着したと知らせが来ると、太陽は返事を待たないまま顧問の先生と仲間に付き添われ病院へと運ばれていった。
おそらく、太陽は私に向かって言ったのだ。
あの強い眼差しは、たしかに私を見つめていた。
サッカー、いつか絶対にやろうね。
その返事は今は口に出せないけれど、確かに心に刻まれた。
雷門の選手たちは太陽の意図が分からず、呆気にとられている選手がほとんどのようだったが。
そんな雷門の困惑の空気を打ち破ったのは、太陽と同じくパタリとフィールドに倒れこむ音だった。
霧野「神童！！」
フィールドに倒れていたのは化身使いの一人として、そしてチームのキャプテンとして試合を動かし、引っ張っていた神童拓人だった。
急遽雷門も救急車を呼び、霧野をはじめとする選手数名と春奈さんが付き添いとして病院へ運ばれていった。
残された選手、マネージャー、そして鬼道さんは試合会場の片付けを終えたらすぐにバスで後を追うようだった。
私も何かするべきだろうか、とベンチから立ち上がるとポケットに入れていたスマホが着信を知らせる。
画面には執事の名前が表示されていた。
A「執事から電話…？」
私からかけることはあっても向こうからかけてくることはそうそうないため、不思議に思って電話をとる。
A「もしもし、どうしたの？」
執事「お嬢様、突然の電話申し訳ございません。実は、早急にお嬢様にお伝えしなければいけないことが…」
続く
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作者名：master_2 | 作成日時：2023年3月27日 1時
