第60話 ページ13
天馬side
後半は倉間先輩に代わって輝が投入された雷門に対して、新雲は選手交代なし。
開始早々剣城と輝が積極的に攻めあがるが、どうやら一筋縄ではいかないようだった。ゴール前までさがっていた太陽にボールを奪われる。
神童「止めるぞ！天馬」
天馬「は、はい！」
キャプテンの声掛けで俺は太陽のマークに着くが、なかなかボールに触ることができない。自在にボールを操る太陽にあしらわれてるような感覚だった。
太陽「攻め方が甘いよ、天馬。君の実力はそんなものじゃないはずだ」
太陽がボールキープ中にみせるわずかな隙に気付いてはいるが、突っ込むことができない。ボールをカットしようとする度に、冬花さんの言葉がよぎる。
『太陽くん、小さいころから病気で、本当は激しい運動を禁じられているの』
そんな俺の思考を見透かしてか、太陽が言葉を続ける。
太陽「君が本気を出しても出さなくても、僕は本気で挑み、そして勝つよ」
天馬「…君は、自分の身体がどうなってもいいの？」
太陽「次の試合も、またプレーできるかどうか分からない。だから一試合一試合を大切に、本気で戦う…！！それが雨宮太陽のサッカーなんだ！！」
天馬「全力で挑む本気のサッカー、それは俺たち雷門のサッカーだ！」
太陽「そうだよ、天馬。だから、本気の相手は君たちじゃなきゃいけないんだ。君たちと、君となら、本気のサッカーを楽しめるはずだからね」
太陽がするりと雷門のDFを抜いていくが、それに必死に食らいつく。
雷門のDF4人、そして俺の相手をし続けてもなおボールは太陽の足元から離れなかった。
どうにか太陽の前に立ちふさがる。
天馬「いかせない！太陽、どうして君みたいなプレイヤーがフィフスセクターに…」
太陽「そうか、君は知らないんだね。フィフスセクターの、いや、聖帝の、本当の意志を…」
天馬「え…」
『聖帝』という言葉に、ふと数日前の出来事を思い出す。
ひったくりを倒したあのシュート、それにぴったりと重なる10年前に俺を助けてくれたあのシュート。
『答えを知りたければ、ホーリーロードを勝ち抜いていくことだ』
あの言葉の意味を、太陽は知っているのか…！？
太陽「だけど、今はフィフスセクターも聖帝も関係ない。全力で戦い、そして勝つ！！それだけだ！！」
太陽の強い気迫に負け、俺は太陽をゴール前まで通してしまった。
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作者名：master_2 | 作成日時：2023年3月27日 1時
