第59話 ページ12
角間「なんとー！？松風外したーっ！！雷門、絶好のチャンスを逃してしまったー！！」
実況が挟まり、前半終了を知らせるホイッスルが鳴る。
新雲との激しい攻防戦と流砂によって両チームとも疲労が顔に浮かんでいるが、それでも天馬の態度は煮えきらないものだった。
A「天馬…」
太陽は「重い病気を持った雨宮太陽」としてではなく「サッカー選手の一人である雨宮太陽」として戦って欲しいはずだ。
そう伝えたいけれど、それを伝えてしまうと私が太陽と知り合いだということがバレてしまう。知り合いだとバレれば言わずもがなシードだと疑われてしまうだろう。
もどかしさに歯噛みしていると、ポンと肩に手を置かれる。
A「…鬼道さん？」
手の主は鬼道さんだった。焦っている私とは逆に笑みを浮かべている。
鬼道「大丈夫だ」
A「でも…」
鬼道「お前が言ったんだろう、雷門の強みはチーム力だと」
ピッチからベンチへ戻ってきている選手たちに目を向けると、剣城が天馬に声をかけていた。
剣城「松風、なぜ手を抜いた」
天馬「えっ…」
衝撃の一言に天馬だけじゃなく他の選手たちも剣城の方を見る。剣城はそんな周りの状況に構わず言葉を続けた。
剣城「今、雷門で本気を出していないのはお前だけだ」
天馬「そんな…」
剣城「やる気がないなら、フィールドから出ろ…！！」
チームメイトのプレイをよく見ている、且つ声をかける剣城の姿に少し驚いてしまった。意外、というかなんというか。
…ううん、フィフスセクターっていう組織に押さえ付けられていただけで、きっとあれが本来の剣城なんだろう。
チームメイトとサッカーに本気で向き合う姿に、ふととある人の姿が重なる。
A「…なんか、豪炎寺さんみたい」
鬼道「アイツの場合は言葉より先に、ボールが飛んでくるがな」
そう言って呆れたように笑う鬼道さんは、どこか嬉しそうな、切なそうな様子だった。
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作者名：master_2 | 作成日時：2023年3月27日 1時
