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俺たち二人の間には気まずい空気が流れ始める。そんな空気を破壊したくて「永瀬って変なやつ」とアイツを出汁に使わせてもらった。
彼女は小さく笑い、「聡さんは素敵な人だよ」と漏らす。変えた呼び名に思わず顔を勢いよく上げてしまった。
新しい永瀬の呼び方は、まるで新婚のような呼び方なのだがどこか違う。「素敵な人」と褒めているのに、彼女の発した言葉は自分の旦那を褒めている風に思えないのだ。
不意に視線を落とすと、彼女の手には出て来た雑貨屋で買ったのか二つほど袋を下げている。それを奪い取った俺は、「家まで送りやす」と彼女の住むホテルの方へ身体を向けた。
喫茶店だとかしこまってしまうから、あわよくば彼女の部屋で冷たい飲み物を流し込みたい。そうして冷静にならなければ、自分の気持ちが満足に伝えられない気がしたのである。
『……そっちじゃない』
「え?」と聴き返すように振り向けば、彼女は俺が進もうとしていた方とは逆の方を指差し、「こっち」と道案内を始めた。
海外に行くためにあのホテルは仮住まいだったはずだ。それなのに今更引っ越した理由はどうしてなのだろう。
取り敢えず彼女の後に続いて行くも、通る道はだんだんと見慣れた……いや、見慣れすぎている街並み。「着いたよ」と振り返るA姉ちゃん。
彼女の前に建つ建物は、俺が住んでいるボロっちぃアパートだった。
『あら、Aちゃんお帰りなさい』
『ただいま、お婆ちゃん』
ちょうど家から出て来た管理人の婆ちゃんは、彼女の存在に何の疑問も抱いていない。俺だけが狼狽えており、そんな姿を見た婆ちゃんはクスクスと笑いを零す。
『言ったでしょう? お隣さんが出来るって』
『それがA姉ちゃんだなんて言ってないじゃないですかィ!』
『そうだったかしら?』
都合の良い時だけ年寄りのお惚けを使いやがって。
ムスッと頬を膨らましてしまうも、気が付いたらそれは萎んでいく。彼女の後に続き、俺は階段を登って彼女の部屋に入った。
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ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます!! 百年!笑笑 私死んじゃってますね笑笑 そう思うと半年ってあっという間ですね〜。半年後、ちょっとでも今より素敵になっていたら嬉しいです。またお会いしましょう! ありがとうございました!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ひなさん» ひなさん! ありがとうございます( ´ ∀`) 最後はちょっとばかり夢主をツンデレっぽくしちゃったので、どうかなー、と思っていたのですが感動的になっていたのなら嬉しいです! また半年後、ひなさんからのコメント待っててもいいですかね!? (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 銀皐月さん» ありがとー! 半年の前にスマホ買ったらおかえりも何もないんだけどね笑笑 でもここではお帰りになるのか! そしたらさっつんに言ってもらおうかな( ´ ∀`) 閲覧とコメントありがとうね。とても嬉しいです!!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うぃーさん» ありがとうございます!! そのシーンを書きたいがために作った作品といっても過言ではないので、そのシーンが印象的に残ってくださることがとても嬉しいです!! 半年後、またこうしてお会いできることを心よりお待ちしております( ´ ∀`) (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ピピコさん» うわ〜私めっちゃ感情描写を書くのが苦手なんですよ( ; ; ) なのでそう言ってもらえると嬉しいです、ありがとうございます!! 半年後にまた会えると嬉しいです( ´ ∀`) 閲覧とコメントをありがとうございました!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年11月14日 19時