あぁ、その子には触れちゃ駄目。なんてったって…

靡いてこない子 ページ13

「あーあ退屈だ、退屈すぎて死にたくなっちゃう」

「それはいつもだろうがこの包帯無駄遣い装置！はやく目の前の書類をせんか！」

「えーだって隣に住む子がねー」

「はやくしろと云っているのが聞こえんのか！貴様の隣の家の住人などどうでもいいわ！」

「ちぇ…」

さすがは中也のことをずっと好きなだけあるのかフラれたらしいのにも関わらずいくら口説いても靡いてこない
「マフィアにいるときから口説いていたのだけどねぇ…」

お試し期間とか如何？と云っても
すみませんが私が好意を抱いているのは太宰幹部ではないのです。と毎度はっきり断られた
冗談のようにしてみても真剣に云ってみても
恋人のふりすらしてくれなかった

……否、1度だけあったっけ

「太宰さん…その…はやくしないとまた国木田さんが怒鳴りにきますよ…？」

「うーん、でもやる気はどこかに落としてきてしまってねぇ」

「元からありませんよね？」

「……そうだね」
時折無自覚に突き刺さる言葉を吐くのは虎の異能を持つ後輩

「手伝うのでしましょうよ、っていうかしてください」

「おや、本当かい。なら私は後でするから先に休憩を取らせて呉れ給え」

「とかいってサボる気ですよね？」

「サボる訳じゃない、一寸この間いい川を見つけたのだよ！だからその川にはやく向かいたいんだ。大丈夫、ちゃんと今日中に戻るから」

「きょ、今日中って……」

「敦君、これは君にしか頼めないんだ！」

「もう騙されませんよ、それしたら僕が国木田さんに怒られるんですから」

「じゃあ頼んだよ！」

「えっ…ちょ、ちょっと太宰さん！」
私は探偵社を飛び出した

まぁいい川を見つけたのは本当だが今日はそれより優先することがある

あの子の為なら別にどんなことだってしてあげたいと思う気持ちに嘘はない。でも矢っ張り中也のことが好きだというからって2人をくっつけてあげる気は毛ほどもない

フラれたのだから好意を寄せているこちらに来てくれてもいいのにねぇ…

彼女は真面目じゃないようで真面目だ
だから中也がたとえ政略結婚だとしても籍を入れてしまえば奪うなんてできないからさすがに諦めるだろう

それまではゆっくり私に溺れさせていけばいい
「治さん」と呼ばせたように

……堕ちておいで、たぁっぷり愛してあげるから


とある人に電話をかける
『やぁ、元気にしてた？』

『貴方から電話なんてお久しぶりね、治』

『一寸中也のことを聞いてね』

その人の名は＿＿









暁百合華

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