蟲退治 ページ15
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悲惨な現場をずっと他人事のように眺めていれば、髭切が刀を抜く。
「ねぇ手合わせってさ、真剣でやっても問題なかったっけ？」
「いや、政府としては真剣の手合わせは特例を除き禁止してたはず。」
「そうだよね、貴重な僕たちをこんな簡単に傷つけたら勿体ないもんね。でもなにか特例が出たんだね。」
「……だとしても政府から特例を出すことはまずない。……考えたくないけど出すとしたら……審神者」
「霊力が高ければ、特例扱いにもなるのか。」
「…………1番嫌な事だけどね。ここの審神者もしかしたら…」
「誰だそこにいるのは。」
道場の奥から、声がした。
私の前に立つ髭切。
襖を開け出てきたのは、ボロボロになった太刀の姿だった。
私の目には、
「やぁやぁ、弟くん。」
「一番最初に兄者を滅したはずなのになぜここにいる。」
弟……そうか、だから髭切なのか。
政府としての読みは当たっていたらしい。
この虫本丸で最初にみた膝丸らしき刀は、髭切に向かって刀を奮った。
「膝丸、お前のその腕じゃ僕に勝てないよ。」
「っ？！」
最初の攻撃を軽々と避けた髭切は膝丸の肩を押す。
ふらついた瞬間を狙って、心臓目掛けて刀を突き刺した。
あっという間に、膝丸は消えていく。
床に落ちた刀が嫌なほど響きらその音はまるで膝丸の叫び声かのように耳に突き刺さった。
「ありゃ、意外とあっさりだったね。」
「名前、覚えてるわりにすぐ刺しましたもんね。」
「……そりゃそうでしょ、僕の弟はこいつじゃない。」
綺麗に残っていた膝丸の刀を踏む髭切。
粉々になり、床にちらばっていた他の破片と区別がつかなくなってしまった。
「名前なんてどうでもいいけど僕の本丸はここじゃない。僕のことを兄者と呼ぶのもこいつじゃない。」
酷く冷めた目にゾッとする。
政府の刀の個体差がここまでとは思わなかった。
あのあと、連絡をくれたこんのすけの姿を探したがどこにもいなかった。
そのかわり厨の近くで首輪と黄色い毛が数本見つかった。
「ありゃりゃもうこの本丸は消滅かな。」
「うん。再刃してもいいけど、バグになられたら困るしね……。」
「じゃあとっとと帰っちゃおう。」
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作者名：名無し子 | 作成日時：2024年2月20日 1時
