解けゆく心〈フィッシャーズ〉

治って帰ったら ページ30

モトキ
「A…よく頑張ったね…」



上目遣いで俺のことを見るA



『魁…何この格好……何それ…なんで包帯巻いてるの…？ねぇ……まさか…私のせいで……』

モトキ
「ううん。Aのせいじゃない。俺が自分を責めすぎてたんだよ…Aが苦しんでるのは俺のせいだって…」

『そ、そんな……私のことなんか気にしないで……私…魁のために頑張ったんだよ……見て欲しくて…早く飛び込みたくて…大好きな魁の胸に…』



Aの手が触れる



モトキ
「痛っ……」

『魁！…怪我したの？』

モトキ
「点滴の針をね…無理矢理取っちゃって…」

『バカだよ…！痛いのに……』

モトキ
「Aに会いたかったから…このくらい痛くないよ……」

『もう…傷つけないで……お願い…魁……私には魁しかいないの……』

モトキ
「うん…大丈夫……ごめんね…心配かけて…今日は俺も一日だけだけど入院するから」

『傍に居たい…』

モトキ
「俺がAの部屋に行くよ。隣だから」



そのあと、自室に戻った



「何故、針を取ったんですか！？」

モトキ
「す、すみません…」



看護師さんに思いっきり怒られたけど…苦笑

その日の夜



モトキ
「A。来たよ」

『待ってたよ…魁……』



傍の椅子に座ると

俺の手に触れるA



『痛いの痛いの飛んで行け…』

モトキ
「A…」

『もうこんな事やっちゃダメだよ…？』

モトキ
「うん」



沈黙が続く

でも、全然違和感がない



モトキ
「ねぇ」

『ん？』

モトキ
「治ったら……その…」

『治ったら？』



落ち着け…

落ち着け俺…

大丈夫…

言える…



モトキ
「治って、帰ったら…」

『帰ったら？』

モトキ
「……っ…」

『魁……何？』

モトキ
「えっと……」



こんなドキドキするなんて…



『魁…』



手を握ってくれるA



『教えて？魁…』

モトキ
「あのね…治って帰ったら……Aを抱きしめたい」

『うん…』

モトキ
「それから…」

『それから？』





モトキ
「キス…したい……」

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