44、夢 ページ44
以前夜通しほっつき歩いていたのは、「自分探し」でもあったのか。
その間の藤ヶ谷の心情を思うと、胸が締め付けられる。
F「男×女のアレコレが気持ち悪いと思い始めて、俺は女と恋愛が出来ないんじゃないかって気付いた。
ずっと悩んでたし、苦しかった。
でも本当に悩んでたのは、自分の恋愛傾向についてじゃない。
俺が悩んでたのは、初めて本気で好きになった人が、好きになっちゃいけない人だった事。
どんなに好きでも、恋人同士にはなれない事。
愛しいって理由だけで、触れちゃいけない事。
この手で無理矢理触れたら、その人に迷惑をかけてしまう事。」
藤ヶ谷の瞳が曇った。
しかしそれは一瞬で、藤ヶ谷は目をキラキラさせたまま言った。
F「俺、頑張って大人になる。
目標の大学行って、夢を叶えるよ。
絶対に!
先生に認めてもらえるような、ちゃんとした社会人になる。」
卒業式の日、藤ヶ谷は下校する前にここにきた。
F「頭痛い。」
K「今日は部活は無しだし、もうすぐ保健室閉めるぞ。」
F「わかってる。
今薬飲んだから、治まるまで少し休ませて。」
仮病かよ、と思うくらい、藤ヶ谷が頭痛を訴えてベッドに横になったのは数ヶ月ぶりだった。
しかし、俺は追い出せなかった。
この保健室も、ベッドも、藤ヶ谷にとっては高校生活の思い出多き場所だ。
F「先生、来て。」
しばらく静かに休んでいたかと思うと、俺を呼ぶ声がした。
今日はもう誰も来ないだろうが、一応カーテンはきっちり閉めておく。
F「もう、卒業式終わったよ。」
K「知ってる。
俺も出席してたわ。」
藤ヶ谷は起き上がると、ベッドの上で正座をした。
K「どうした、一体。」
F「北山先生、俺を卒業させてくれてありがとうございます。
先生がいなかったら俺……来年も、もしかしたら再来年も高3Z組でした。」
K「だな。
でも良く頑張った。
藤ヶ谷……卒業おめ・・・」
言おうとして、急に喉が詰まった。
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kyumapi(プロフ) - まいまいさん» コメありがとうございます! 他の生徒の手当てする先生をカーテンの陰からジットリ見てるたいぴちゃんが、自分的には気に入っています。先生が好きなあまり、だいぶキモカワ輔状態で(笑) リアルでも無言でそんな視線を投げかけてたら…妄想だけで白飯100杯イケますね。 (2020年9月9日 22時) (レス) id: 52d20d0833 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - こんにちは!!凄く素敵なお話でした!!先生〜、優しいですぅ…こんな先生がいたら好きになっちゃいますよね!!いつもFさんを見守ってくれているKi先生、最高でした!!!本当にありがとうございます♪ (2020年9月9日 13時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
kyumapi(プロフ) - まちゅみさん» コメありがとうございます! ピンポイントで拾って頂いて嬉しく思います。細かい所まで読んで下さってるんだなぁって。北山先生を独り占めしたい太ちゃんが伝わりますように。この後もお付き合い宜しくお願い致します。 (2020年6月14日 17時) (レス) id: 52d20d0833 (このIDを非表示/違反報告)
まちゅみ(プロフ) - 「保健室も北山先生も、俺の貸し切り状態だ。」のセリフがとっても好きです!! (2020年6月13日 23時) (レス) id: 3adf70ee92 (このIDを非表示/違反報告)
kyumapi(プロフ) - みちこさん» おおお!あの伝説の尊い表紙のデュエットでしょうか。私も持っております。あの時代の太ちゃんをどうぞ御想像下さい。北山先生は「大人の余裕」を見せるのか、太ちゃんはどんなトラップを仕掛けてくるのか、どうぞお楽しみに。 (2020年6月8日 19時) (レス) id: 52d20d0833 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyumapi | 作成日時:2020年6月4日 21時