今ヒトタビノ 逢フコトモガナ

43、DNA(K) ページ43

北山side



俺達は神様に背いた。


罪悪感は無かった。


何と言っても、俺達が気後れするくらい当の玉森が一番乗り気だった。


望んだのは俺だ。


でも俺の背中を押した上、文字通り身をそれに投じたのは玉森自らだった。


T「面白そうじゃん。」


その簡単な一言で、選んではいけない道を選び取ってしまった。





手始めとして玉森は、ずっと玉森にモーションをかけていた宮田との結婚に踏み切った。


神様に祝福されるのは、宮田と玉森の二人の自然に任せた「愛の結晶」だけのはずなのに……。


二人の「愛の結晶」は、通常の生殖行為によってではなく、体外で出来上がった。


そこに、本来ならば二つの祝福されざる命を加えて、合計三つの命が玉森の体内に戻された。


T「時間を無駄に使いたくない。
いっぺんに終わらせたいんだ。
多胎って言っても三人くらいならイケるっしょ。
宮田〜頼むよ？」


M「お、おう。」


宮田は玉森の言いなりだった。





俺はそもそも藤ヶ谷のDNAが、この世から消えて無くなる事が怖かった。


だからあまり深い考えも無しに、勝手に藤ヶ谷のそれをアンプルに閉じ込めて、玉森の研究室の液体窒素のタンクに入れさせて貰った。


藤ヶ谷の子供が将来誕生する可能性が残される。


しかし、俺はもっと多くを望んでしまった。


体細胞クローン……。


家畜ではとっに成功している。


ヒトに応用する事は倫理上許されてはいない。


原理は単純だが……上手く行くだろうか。


失敗する事も念頭に入れて、玉森と藤ヶ谷の「便宜上の結晶」もバックアップとして作り上げた。


由来の違う三個の命が同時に玉森に宿り、玉森の体に根を張った。

補足　※三つ子ちゃんのDNAについて→←42、桜(K)

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