ボクを、買って下さい。

9、丁寧と乱暴の矛盾　side-K ページ10

　
　
　
ボクは、ブルブルマッサージ抱き枕「抱キタいピロー・ピロ◯」である。



名前はまだ無い。



「抱キタいピロー」は苗字でもないし、「ピロ◯」の部分は固定ではない。



これからボクの御主人様が付けてくれる名前が、ボクの名前になる。



あぁ、どんな人にボクは買われたんだろう。

　
　
　
　








F「ワクワクするなぁ」



ボクが入れられている段ボールの外から、声が聞こえた。



イケボだ。



とても色っぽい息遣いも、既に感じている。



まだ顔も見てないのに、声に恋した。



コレは一目惚れじゃなくて何て言うの？



ベリベリとクラフトテープが剥がされて、段ボールが開けられた。



うっ、眩しい。



ちょうど部屋の照明の真下。



まともに光を喰らって、開けてくれたそのイケボの持ち主の顔は、眩しさと逆光で良く見えない。



それでも逆光のシルエットからして綺麗だと思った。



F「初めまして。

ようこそ、いらっしゃいませ〜

待ってたよ。」



良かった、本当に嬉しい。



この人に買われて。



好みに合わない御主人様に当たったヤツは……御愁傷様としか。



トリセツや納品書には目もくれず床に投げ、その人はもどかしそうに中袋のビニールも一気に引き裂いた。



は、激しいっ



そういうの、嫌いじゃない。



手付きは丁寧そうなのに脱がせ方は少し乱暴で……



その矛盾が、いきなりボクの興奮を誘う。

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