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47.(宏光side) ページ47

東京に戻る途中





「もう一か所行きたい所があるんだけど…。宏光、大丈夫?」





疲れてるかな…って覗き込む瞳

太輔の方が俺よりもずっと疲れてるはず…





「俺は大丈夫だよ。」





そう答えた





連れて来られた場所は海…

いつかの日みたいに、太輔に手を引かれ海岸へと降りて行く

海と空の境界線が分からない程、真っ暗な海

冷たい風が誰もいない海の寂しさを感じさせる

けれど…





「いつか…宏光、海は嫌いだって言ってたでしょう?…まだ…怖い…?」





自分でも驚くほど、怖くなかった

太輔の手の温もりに、いつもの震えも感じなかった





「怖くない、全然…」





むしろ…波に揺れる月が綺麗だとすら感じていた





太輔はじっと海を見つめる俺の隣で同じように海を見つめている

そして





「宏光の辛い過去や悲しい想い出を全て消し去る事が出来たら、宏光はきっと楽になるんだろうけど…悔しいけれど俺にはそんな力はない。」





そのまま、静かに話し始めた

月明かりにほんの少し見えたその表情は悲しげで…





「けどね、宏光の過去も宏光の苦しみも…全部含めて宏光を愛する事には自信がある。宏光にとっては辛い過去も…今の宏光を作る大切な要素で…。それがなきゃ、今の宏光はいない。俺は…今の宏光を愛してる…。そして、これからの宏光も愛すると誓えるから…。」





月の光を映すその瞳は、真っ直ぐに…未来を見つめているみたいだった

そして、俺にゆっくりと向き合い、その真っ直ぐ視線を俺に移すと





「俺と一緒に生きてください。」





真剣な眼差しで、そう…伝えてくれた





「太輔…」

「俺ね、宏光のお母さんと話した時、その言葉の中に強さを感じたんだ。宏光を今日まで育てて、支えてくれたその強さに凄く感動した。そして…その強さを俺も持ちたいって思った。宏光を守れる強さを。これからは俺が傍にいて、宏光を守っていく。宏光の笑顔を…俺に守らせて。」





太輔の実家で流した涙、せっかく止めたのに…また、溢れて…もう止められなかった





「俺と一緒に幸せを作っていこう…。」





そう言って、ゆっくりと俺の左手に填められた指輪

それは、これからの幸せを予感する美しいきらめきを放っていた




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作者名:MISA | 作成日時:2016年6月29日 21時

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