３７．（太輔side） ページ37
「忠くんがいないと静かだなぁ…」
学食のテーブルでお気に入りの日替わりランチを食べながら、宏光が呟く
「寂しい？」
「寂しい…」
「…」
先月までテーブルを賑わしてた大倉くんは、無事宏光と一緒に大学を卒業し、実家の会社を継ぐために大阪に帰って行った
大倉くんを見送りに行った時の宏光の号泣ぷりを見た時は、正直…引いた
院生が大学の学食に当然のように通ってる事も、恋人が必死でゲットした日替わり定食を惜しげもなくバクバク食べてる事も、恋人を目の前にして他の男がいないと嘆いてる事も…
ある意味ドン引きなんだけど…
「今日、太輔んち行ってもいい？」
「あぁ…今日はバイト。」
「そっか…」
罪悪感感じるほどガッカリな顔して…
「なるべく早く帰るから、家に来て待ってて。」
「うんっ！！！」
ホントに年上か？ってくらい無邪気な顔して喜ばれたら…
「ハァ…可愛い…」
全部許してしまうんだよなぁ…
「んふふ。太輔も大変だねぇ(笑)」
「ホント…無自覚、無邪気、無感覚の3拍子…。」
「よしよし。」
「あっ！裕太だ！」
「渉ぅー。また他の男の名前…ん？…玉？」
宏光がブンブンと手を振っている
振り返るといる筈のない玉が満面の笑みでこちらに向かって来ていた
「お前、なんでここにいるんだよ。」
「えへ。来ちゃった。」
「来ちゃった、じゃねぇし。」
「今日、大学は？」
「行ったよ。でも、午後から休講になっちゃって、暇だったから来てみた。」
「なんだよ。来るなら連絡くれればいいのに。」
「しようと思ったんだけどさ…」
「ん？」
「これ、貰っちゃって…」
玉が差し出したのは、名刺ガジェット
「え…モデル事務所？」
「うん。なんかしつこくってさぁ。」
と本当に嫌そうな顔をすると、宏光と渉の間に迷うことなく座った
「横尾さん、ここ知ってる？」
「あぁ…、結構大手だね。」
「そうなの？ってか、貴方が横尾さん？」
「え？あぁ、うん。初めまして。裕太くんの事は、みっちゃんから色々聞いてるよ。」
「俺もわったーの事、聞いてます。ミツとガヤがいつもお世話になってます。」
「わったー？」
「あぁ、コイツいつの間にか、わったーって呼んでて。」
「そっか(笑)」
こうしてまた…誰も何の疑問も持たず、玉がランチ仲間に加わることになる…
．
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作者名：MISA
| 作成日時：2016年6月29日 21時
