第十一訓 ページ13
気づいたら夜が明けていた。
姉様に会う気になれなかったから
総悟君の所に向かった。
「なんだろう、道場の方から声が聞こえる。」
まだ朝早いのに、
「少し覗いてみるか。」
中では総悟君と土方が竹刀の打ち合いをしていた。
「総悟君、剣に迷いがある・・・」
とっさに隠れて話を聞いていた。
「・・・ねーんです
もう・・・長ェことねぇみたいなんでさァ。」
「やってられねーよ、ようやく幸せ手につかんだと思ったのに・・・せめてよォ
死ぬ前に一時でも
人並みの幸せ味あわせてやりてーんですよ。」
分からなかった。
偽りの愛を与えるのが幸せになる方法なのか、
傷つけた男の側に居させてやるのがいいのか。
「取引は明日の晩だ。刀の手入れをしとけ。」
土方は決めたらしい。
自分で全て背負うことを・・・
大きな音がした後、土方が出てきた。
「お前・・・」
「決めたんですね。」
「なんのことだ。」
土方は顔を少しそらしていた。
「私も行きますよ、今日。」
土方は驚いていた。
何故知っている、とか
来るな、とか言いたそうにしていたけれど、
「姉貴はいいのか。」
と聞いた。
いいわけなかった。でも
「いいんです。姉様が逢いたいのはあなただから。
あなたはちゃんと
姉様の所に帰ってきてくれるんですよね。」
土方はなにも答えず去っていった。
「ずるい人。」
ただ、そう思った。
総悟君の所にいくと
「気にくわねェ・・・」
と呟やいていた。
近寄って頭を撫でながら
「本当に。気にくわないです。」
と言うと驚いた顔をした。
でも次第に顔が緩んでいき
「姉さんは変わりやした。」
と言った。
そうだろうか。
と考えていたところ
「前は俺に近づいたりしやせんでした。」
とはにかんだ。
そうかもしれない。
昔はただ知るのが怖くて姉様から離れたくなかった
総悟君が姉様をとっていってしまうのが怖かった
「...そうかもしれないですね。」
と返すと、笑って
「姉上の所に行って下さい。
俺も後から行きます。」
と言われた。
「ええ。」
と答え、屯所から離れ病院へと向かった。
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作者名：七竈 | 作成日時：2015年12月10日 23時
