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その理由ー中原中也 ページ43

これは個人的な意見だが、私は写真を撮るのが好きだ。しかし、それは人が写っているのは好まない。人ではなく、自然か建物か動物の写真が私は好きだ。

人は何故、人を写したがるのか私にはあまり理解出来なかった。

それが、やっと分かった。

お気に入りのカメラで海や空を撮っていた。周りには家族連れや恋人達が楽しく水浴びをしている。そんな人達がカメラに写らないようにしていたが、それでも何処かしらで写ってしまって、確認するごとに消去していく。

「また写真なんか撮ってんのか」

後ろからカメラを覗き込む中原中也に、私は撮った写真を見せた。

「見事に海と空しかねぇな」

「人が写っているのが嫌いだから」

カメラを彼から遠ざけ、日陰の場所に行き、座れば隣に彼も座った。

「暑そう」

「手前もな」

黒い色の服が中心である彼の服装は見ていて涼しいようには見えない。かと言って日焼けしないように長袖長ズボンの格好している自分が言えたことではないが。

「中也」

私は、ほんの少しな悪戯心で不意に彼の顔をカメラに収めた。カメラには汗を流す中原中也の写真。

横顔より、少し斜め上に彼の顔が向いていて、彼の目が上からカメラを見ているような写真は、彼の綺麗な輪郭がはっきりと分かる。汗が額と首筋に伝って、それが一層彼の整った顔立ちやその肉体を、たったそれだけで彼の魅力を引き立てていた。

「・・・これ、好き」

自分から初めて人が写る写真を撮ったのは思いのほか、綺麗に撮れていた。

人が人を撮りたがるのはこれ理由なのではないかと私は考えた。

「少し行ってくる」

「おう。」

他にも綺麗に撮れるかもしれないと思い、私は家族連れや恋人達に写真を撮りたいからと協力をお願いして撮るものの、彼ほど、綺麗に人が写真に写る事がなかった。

モデルか、それとも光の強さか場所か、時間帯か。私は色々考えても答えは見つからなかった。

私は彼の写真を額縁に入れて飾っていた。

「・・・。」

その写真を見る度に、私は彼はこんなに綺麗だったかと思い知らされた。今までどうして気付かなかったのだろう。

「中也!」

「手前から来るなんて珍しいな。なんかいいやつでも撮れたか」

「中也以外の人はどうしても駄目だった。お願い!中也の写真が欲しいから撮らせて!」

「俺の写真?」

「ダメかな・・・?」

あの写真を見ていると私はどうしてか幸せな気分になる。多分、それは初めて人を撮る喜びを知ったからだと、私は思っている。

続壱→←恐怖の涙ー芥川龍之介



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , ヤンデレ , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2016年6月25日 8時

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