親愛なる嘘へー江戸川乱歩 ページ39
私は昔から嘘つきと呼ばれて、誰も信じてくれない。例え、真実を言ったとしても誰も信じてくれない。
無実の罪を着せられた。真実を言った。けれど、犯人は私だと勝手に決められた。アリバイなんて言っても信じてくれない。誰も耳を貸してくれない。
泣いても、泣いてるフリ。嘆いても、嘆いているフリ。そんな捉え方しか皆してくれない。家族も、友達だと思ってた人も、警察も探偵も、皆信じてくれない。罪を認めろと言うだけ。
どうして誰も信じてくれないのだろう。
「君は嘘つきじゃない。」
世界でたったひとり、彼だけがそう言ってくれた。けど怖かった。彼も、いつか私を嘘つきと呼んでひとりにさせるんじゃないかって。
「この名探偵が犯罪者でもなんでもない一般人の嘘に騙されるなんて有り得ない。絶対に。君の嘘を信じる皆が莫迦なんだ。」
と彼は言った。だから、私は賭けた。
「ごめんなさい。今の話し全部嘘です。」
「今、君は僕に嘘を吐いた。僕には嘘なんて通用しないよ。分からない?」
怒られた。
「信じてくれるんですか?」
「だから!何度も言わせないでよ!僕に嘘なんて通用しないんだから嘘を吐いたって無意味でしょ!」
それはつまり信じてくれるという事なのだろうか。私は、初めて私を信じてくれる人に出会えた。と思った。もう何年も嘘付きと呼ばれ続ければ人間不信になるものだ。
だが、もう人なんて信じたくない。信じたところで何も意味をなさない。
「あんたのせいよ」
知らない女の人に怒号を浴びせられた。
「あんたが居るせいでっ、生きているせいでっ」
「あの・・・。」
「何よ!この嘘付き!」
何で怒っているのか分からない。女の人の怒号に人が集まってきて、早くこの場から立ち去りたかった。
ーなに、なにがあったの?
ーなんかあの女の人が、あの怒ってる人に嘘ついたんだって
ー酷いよな
「・・・。」
ただ女の人が勝手に怒ってるだけで、人は勝手に判断する。何も知らないのに知ったように言う。
「聞いたわよ!貴方が彼を騙したって!だから彼がっ、私に離れて行ったって!他の子も!全部貴方のせいだって!」
「なんのことだか・・記憶にないですが」
「そうやって嘘を吐くの!?」
「嘘も何も・・・。」
「あんたの同級生が、全部あんたの嘘で騙したって聞いたわよ!」
「同級生?」
「知らない訳じゃないでしょ?」
私はその同級の名前を教えてもらっても全く記憶になかった。同級生の名前なんて、もう忘れていた。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時