続弐 ページ38
だが、それが彼であると私は確信した。だからこそ、最後の希望だと思った。でも、私は手を伸ばせなかった。怖かった。彼だと勝手に私が思っているだけで、本当は別の人ではないかと。
私は夢から覚めたくて、うずくまった。どうか、覚めて。また彼を想い苦しむ日々には戻りたくないのだ。私はもう、苦しみたくない!
けれども、あぁ、神様は私の願いなど叶えてくれない。
「見つけたぜ」
たったその一言で、私は夢から覚めた。
「・・ちゅ、ぅ・・や・・・?」
目覚めたばかりの声で、最初に発した言葉は彼の名前だった。そして同時に涙を流しながら、私は日記を開いて、こう書いた。
『見つけたぜ』と彼は言った。
そして日記に書き終えた時、私はまた彼に会えるのではないかと目を閉じたが、やはり目を閉じても眠気は来ず、彼には会えなかった。
「やっと、会えたっ」
それでも嬉しくて涙を流し続けながら、私は天井に手を伸ばした。彼が今、目の前に居て、そして私に手を掴もうとしている。と、そんな妄想をし、けれど、有り得ない事を妄想したと手を降ろした。
「見つけたぜ」
「っ!?」
だが、手は完全に降ろされることなく、目の前にはまるでブラックホールのようなものから、愛おしい声と共に手が現れ、私の手を掴み、強引に引っ張った。
私は咄嗟に目を閉じ、身体がそのブラックホールから抜け出すのを待った。手は、まだ繋がっている。
「優希」
目を閉じていても分かる。私は光のある場所に連れてこられたのだ。そして、愛おしい声が耳元で囁かれ、私は目を開けた。
「っ・・・。」
そして、何度目か分からない涙を流した。
「探してたんだぜ・・ずっと」
彼の手が私の頬をそっと撫で、その瞳には私は映っていた。
私は夢を見てるのか。それでもいい。彼が私の傍にいる!それは紛れもない真実なのだ!
だが、私は嬉しさと恥ずかしさとで動けずにいた。あんなに想っていたのに、目の前にいざ彼が居ると何も出来ない。何も言えない。
「俺に、愛される覚悟は出来てんだろ?」
その言葉に私は考えた。
愛される?私はずっと想ってばかりで、愛されるなんて考えた事がなかった。私は、私が彼に会ってもいいのか、彼を愛していいのか、そればかり考えていた。
愛してより会いたい。という思いしかなかった。
「あいしてくれるの?」
やっと発せられた言葉はあまりにも幼稚なものだった。
「あぁ、愛してやる。ありったけのな」
その言葉に私は声を上げて泣いた。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時