その行為、異常ー福沢諭吉 ページ34
※登場キャラクターが自傷行為する文章があります。嫌、また苦手の方はお戻り下さい。
傷だらけの体を、私は消したいけれど、もう傷が消えないほど深くなった傷を眺め、誰にも愛されない体になったと思い、ひとり涙を流した。
私は生きてきたなかで恋人を今まで作った事がない。自傷行為をしてしまってから、自分に元から自信なかったものが、更に自信をなくした。
だから、出来たとしても捨てられる気がしたのだ。
そんな私だが、神様はたったひとつだけ与えてくださったものがある。
「優希」
「?」
好きな人が呼ぶ声に、私は身体の機能が全て停止した。そして機能がやっと回復し動き出す時、私はまるで操り人形のように、見えない糸によって、見えない糸の、その操り人形の人形師のもとへ行くのだ。
時間は午後。決まってこの時間。社員はすでに誰も居ない。
「来なさい。」
私の腕を掴み、社長の部屋へ連れられた。そして社長が私の服の袖をめくり、その綺麗な顔立ちに眉間に皺を寄せた。
腕に見えるのは赤くなった薄い線が多数
「・・・したのか」
その一言、私は黙った。言い訳なんて言った所で、それが嘘か真実か見破られる。
社長は私の手を離した。そして机の引き出しの中からカッターナイフを取り出した。嫌な予感がした。
「・・・」
社長は無言で、カッターナイフで己の指を切った。
「社長っ!?」
社長の指から赤い血がポタポタと落ちた。私は体が一気に冷えて、慌てて絆創膏を取ってこようと部屋を出ようとしたが、社長に腕を掴まれ、そのまま後ろから抱き締められた。
「社長?」
後ろから抱きしめる社長に顔だけを動かして様子を見た。社長は切った指から溢れる血を舐めていた。その赤い舌が傷を舐め、そして血を吸うと空いてる手で私を顎を優しく掴むと接吻してきた。
「っ・・!」
鉄の、血の味がした。まるで血を与えているようなそれに背筋がゾクゾクした。
目を瞑ることなく、互いの目を見て続ける接吻。私のこの異様であろう行為がたまらなく好きだ。
少しだけ長い接吻が終わり、お互い離れる。社長は珍しく微笑んでいた。
「嫌ではなかったか」
「・・・。」
嫌だったらきっと押し返していた。己の血を、相手に与える行為は気味が悪いかもしれない。しかし、私にとってそれは神様が与えてくれた甘美な贈り物なのだ。
この異常で狂ったようなそれは、実は社長が好物であるのを私は知っている。
私も、大好物だ。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時