腐敗の手ー太宰治 ページ4
※主人公は異能力者です。
「駄目だよ。私が居ない間に触ったら・・・」
そう言って、私の頭をそっと撫でてくれる彼に何度も涙を流した。
「私、もう嫌です。」
「私が居れば良いだけの話だよ。大丈夫、優希ちゃんが心配することなんて、何一つないからね。」
「太宰さん・・・。」
部屋に、横たわる一匹の猫。それはお腹から腐って、もう命はない。先程まで何もなく元気だった。
「大丈夫。後始末は私がするから隣の部屋で待っているんだよ。」
「分かりました。」
そして、猫の死体を始末してくれる太宰さんに私はまた泣いた。
私の異能力は触れたものを腐敗させる異能力。手袋をしていれば問題ないし、腐敗させる対象は動物と人間のみ。
自分自身には異能力は効かないけれど、これは危ないものだと言われた。
それに、手袋越しからでしか触れないのは寂しいのだ。今まで出来た恋人達には手袋を外すように言われた。
異能力の事は言えず、だからと言って外して触れてしまえば腐敗させてしまう。
それが怖くて、別れを切り出すのはいつも自分からだった。
仕事上でも、その事を話せず、バイトで手袋しても怪しまれないのを探していた苦しい日々。
多分そんな生活を一年近く過ごしてきて、ある時、異能力者が集まっている探偵社があると知り、武装探偵社に行ったところ、その場には太宰さんしかいなかったのが、私と太宰さんの出会いでもある。
最初は太宰さんに触れるのを断った。彼は異能を無効化する異能力者と知らず、知った時は安心した。
触れられる人がいる。と
「終わったよ・・・また泣いているのかい」
「太宰さん・・。」
隣の部屋のベッドの上でうずくまっていた。生きている命を奪ったのだ。
腐敗させるこの異能力。初めて知った時の、初めての被害者が親だった。
親が苦しむ様を見ていた。化け物だと言われ、けれどそれを証明する人は私しかいない。
けれど証明しようとするなら、それに犠牲者が必要だ。私は何も言わなかった。孤児になって、孤児院でずっと腐敗させる異能力を話さずに居て育った。
怖かった。自分が化け物だと知って、死のうとしたけれど、死ねる勇気がなく、生きてきた。
「太宰さん・・・我が儘を聞いてくれますか」
「優希ちゃんの我が儘かい?それはきっと、可愛らしい我が儘かな・・?」
「ずっと・・手を握って下さい」
「やっぱり可愛らしい我が儘だね。いいよ、今日はこのまま寝てしまおうか。」
そう言って抱き締めてくれた。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時