夢物語ー中原中也 ページ22
私が何故彼が愛おしいのか、それを語ったところで何も減りはしないが、まぁ、聞いたところで面白くもないだろう。
だが、話をしてしまうのはきっと幸せだからなのだろう。
出会いというのは本当に不思議だ。夢だと思ったのだ。いや、夢が現実へと変わったのだ。
私は最初、自分の部屋で寝ていた。起きた時、身体が意識もせずに動いた。
まずはリビングに行き、何も考えることなく何処か見つめていた。
そして、外から色んな声が聞こえた。その中に、好きな人の声が聞こえたのだ。
あぁ、彼の声だと、私は最初聴いていた。けれど、聴いている内に会いたいと思った。
会いたいならば、会いに行けばいい。
そうだ。会えばいい。探せばいい。これは夢だ。夢なのだ。
私は欲望のままに走った。部屋から出て、左右を確認する。彼はいない。さて、何処か。
私は左へ向かった。そして見えたのは白い階段。私はそれを駆け上がる。今度は大きな広場が見えた。
大きな広場から、離れた場所は綺麗な庭があった。透明なドアがあって、その向こうに彼が居た。
後ろ姿だった。私は夢が覚めるまで、あと一分もないと分かった。
だから走った。透明なドアを開け、抱き付いたのだ。
彼は声を上げず、ただ受け止めてくれた。
そして、私は夢だからと、彼の腕を掴んでそのまま接吻をしたのだ。
想い焦がれ、ずっとこうしたかったのだ。夢だけでも、何度祈っても願っても叶わなかった。だから、この機を逃したくなかった。
私は満足だった。例え、届かない存在であっても、夢の中であっても、叶ったのだから。
そこから、私はどうやら夢から現実へと夢そのものが叶ったのだ。
目から覚めれば、そこは知らない部屋のベッドで寝ていた。それには流石に驚いて辺りを見渡そうとしたけれど、どうやら鎖とベッドが繋がっており、鎖を辿って見れば、手首に枷がついてそれと鎖が繋いであった。
「っ・・・」
どうしよう。このまま逃げずに居たら最悪な事しか起きない。それしか考えられない。
兎に角逃げる方法を探してみるしかない。
とりあえず引っ張ってみるけど鎖の重々しい音しか響かず、もしこの音で気付かれたらと思うと、動けなくなった。
さて、どうしようかと考えいく頭とは反対に心臓は慌ただしく五月蝿く鼓動している。
どうか、この鎖を外すだけの時間を私に下さい。あぁ、神様っ!
そんな事を思っていると神様は裏切るようで、扉が重い音を響かせ、ゆっくりと部屋を照らした。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時