神 様 の 娘 【刀剣乱舞】

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左右に短刀と娘が植えた花をこしらえた庭の奥へと続く細い道を、燭台切光忠は花を踏まぬように注意しながら早足で歩く。

Aは何かあると直ぐに奥へ行ってしまう為、いつもは通りやすい短刀達に任せているのだが今回はそうもいかない。
あの場に居て直ぐに動けたのは自分だけで、更に自分が世話役と来たら追いかける他ないのだ。


燭台切光忠は数十秒かけて花の道を通り抜けると、ひっそりと佇む離れに足を踏み入れる。その縁側の隅で娘は小さく縮こまっていた。




「A」




いつもよりも優しい声を心がけて名前を呼べば、涙でぼろぼろな顔を向けてくるA。
燭台切光忠は彼女のそばに膝をつけると持っていたハンカチで止めどなく溢れる涙を拭ってやると、Aが力なくスーツの裾を掴んだ。




『しょ、くだいぎり、おとさま、わたし』


「うん」


『お、かぁさまに……また、』


「……うん」


『……おこ、られて…しまいました……っ』




体育座りとも三角座りとも言う体制で再び体を小さくしたAを、燭台切光忠は壊れ物に触れるように抱きしめる。

嗚咽を漏らしながら喋ろうとする娘に、何も言わなくていいよ、と声をかけて背中を叩けば娘は泣くことだけに集中した。



この子は、母親に何度怒鳴られようと何時も嫌われようと審神者を愛している。父親は何十人も居るAにとって、たった一人と言う母親の存在はそれほどまでに大きいのだ。

そしてAは、母親に怒られる原因は全て自分にあると思い込みいつもこうやって一人で泣いてしまう。
燭台切光忠や他の刀剣達はそれが辛かった。

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