弐拾伍＊鶴丸と夢 ページ31
「まぁ簡単に言えば、君の中にいるソイツに引き込まれた」
やがて笑顔に戻ったと思えば、私の胸を指差した。
ソイツとは一体誰のことだろうか。
「まさか、覚えてないのか？驚きだな…」
私が首をかしげたために、鶴丸さんは呆れた顔をした。
覚えていないということは、幼少期の頃の話だろうか。
「まぁいい。いつか、ソイツも役に立つからな」
「あの！ソイツって誰ですか？」
「今は知らなくてもいい」
それだけ言うと、彼は前を向いて歩き始めた。
前といっても、この空間では前後左右が不明なのだが。
私は慌てて彼の後を追う。
「あの、鶴丸さんも刀剣男士ですよね？どうして私の夢の中に？」
「引き込まれた理由か？まぁそれは、俺が魂だけでさ迷っていたからだな」
魂だけ…肉体はどうしたのだろうか。
「戻らないんですか？」
「戻る？可笑しなことを言う。戻れないから此処にいるんだぜ？」
戻れない？
「どうしてですか？」
「君は『どうして』ばかりだな」
鶴丸さんはクツクツと笑うと、歩みを止めて振り返った。
「俺の肉体は本丸にある。だが、今は乗っ取られていてな…戻れないんだ。
君は会っているはずだぜ。俺に」
そう言われて、ハッとした。
確かに会っている。眠る前に。
「でも、あの人は真っ黒で…」
「そりゃあそうだ。既に闇堕ちしているからな。
残った理性で動いているも同然。
たちまち気を抜けば奴のモノになるからな…今はそれを防ぐことで精一杯だ」
そう語る鶴丸さんの表情は、明るいものではなかった。
悔しさに歪められ、瞳は哀しげに影を落としていた。
「俺はいつでも君の傍に居たんだが、まさかアイツが接触してくるとはな…」
「アイツって、あの黒い鶴丸さんのことですよね」
「ああ…。光坊から毒を盛られた時、宗三から斬られかけた時、君が重症を負った時…
いつでも守ってやれたんだが、さすがに奴には軽く手出しができなかった」
彼の言葉に、今までの謎のピースがはまった感覚があった。
毒を盛られた時に助けてくれた人？
宗三さんの刀を弾いた人？
私の痛みを肩代わりしてくれた人？
この刀は、ずっと近くで私を守っていたんだ。
ずっと１人で、この空間で痛みに耐える姿を想像すると、泣き出してしまいそうだった。
「あぁ君、そろそろ目覚めの時間だな。
一つだけ伝えておく。闇堕ちした俺の中には――」
鶴丸さんの声が遠のいていく。
「――…田嶋がいる」
その後の鶴丸さんの言葉に、涙が溢れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^これからも、お身体に気をつけて頑張って下さい^_^ (2020年3月18日 0時) (
レス) id: 161c6e3e4c (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (2018年10月27日 12時) (レス) id: 866317dc4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年10月4日 1時
