検索窓
今日:37 hit、昨日:0 hit、合計:46,966 hit

拾玖*攻防戦 ページ24

すると、奥の部屋から鉄の衝突音が響いてきた。

誰かが殺り合っている…!

「下がって、兄様!」

「小夜!」

力が緩まった一瞬を逃さずに兄様の手から逃れ、刀を構える。

瞬間――。

「ぐわあぁっ!!」

その声とともに襖を破って誰かが飛んできた。

僕の小さな体では支えきれず、そのまま一緒に庭まで吹き飛んでしまった。

「お小夜っ!!」

僕を呼ぶ宗三兄様の声が聞こえたけど、それに応えてる余裕はなかった。

「ぐっ…こ、のやろ…ッ!」

吹き飛んできた影がゆっくりと上体を起こす感覚が伝わってきた。

それに乗って、僕も上に被さる襖を退かした。

「!…加州さん」

影の正体はこの本丸の初期刀、加州清光さんだった。

大分気が立っているのが見て取れる。

ふと視線の先を追うと、さっきまで僕がいた所に歌仙が立っていた。

不気味な笑みを浮かべて、立っていた。

加州さんは刀を握り直すと、再び歌仙に向かって走り出した。

「主に近づくなっ!!」

その台詞を吐き捨てて、彼らは刀を交差させた。

もしかして、加州さんは既に審神者と接触してるの?

2人の攻防戦をぼんやりと見つめながら、部屋の奥に佇む人物へ目を向ける。

その人は、紛れもない人間だった。

「人の子…!」

まずい。あそこに居ては、宗三兄様に殺されてしまう!

僕は咄嗟の判断で人の子との距離を縮めた。

案の定、人間の気配に気付いた宗三兄様が刀の柄に手をかけた。

僕が彼女を守るのと、宗三兄様が手にかけるのと、どちらが早いだろうか。

僕は縁側に足を置いて登った。

宗三兄様が刀を抜いた。

僕は部屋に足を踏み入れた。

宗三兄様が刀を振りかぶった。

僕は―――。


―――僕は遅かった。間に合わなかった。

でも、兄様の刀は弾かれた。

「――…ッ!?」

2人で目を見開いた。驚いたんだ。

だって人間は腕で庇っただけなのに、まるで刀で防いだように弾いたから。

人間も尻餅をついたまま兄様を見上げ、目を見開いている。

一体何が起きたんだろう…。

なんて、考えていると、今度は人影が僕の横を素早く通っていった。

「主に…手を出すなぁぁ!!」

赤いまふらぁを靡(ナビ)かせながら、加州さんは刀を振りかざした。

今度は間に合う。

僕は振り下ろされた刀を自身で受け止めた。

「宗三兄様にッ……近づかないで!」

何とか力を振り絞って刀を払うと、加州さんは後退した。

その時――

「もうやめて!!」

審神者の声で、言霊で、僕らは落ち着いた。

弐拾*どうして→←拾捌*左文字



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
145人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^これからも、お身体に気をつけて頑張って下さい^_^ (2020年3月18日 0時) (レス) id: 161c6e3e4c (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2018年10月27日 12時) (レス) id: 866317dc4d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年10月4日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。