参拾肆＊品定めこと大将定め…薬研side ページ35
審神者の話は長谷部から聞いた。
「薬研、新しい主が来られたぞ」
「は…それ、本当か？」
長谷部の一言で、同室にいた兄弟達が怯えだす。
そんな中、長谷部の旦那は心做(ﾅ)しか嬉しそうだ。
一体何があったんだ……。
というか、傷が治ってる？
まさか、新しい審神者が――…？
いや、油断大敵か。そういう審神者こそ油断は出来ないはずだ。
そこまで考えた後、厚、乱、俺っちは兄弟達を守ろうとある合言葉を共有した。
"二の舞にはしない"
そのためには、先に俺っち達が審神者に恐怖を埋め込めばいい。
兄弟を守るために……いち兄を"アイツ"に会わせるために…。
いつの日か、いち兄は何かを見て言った。
『弟を……頼みます…』
誰に言ったのか検討もつかないが、いち兄が認めた人なら……
我慢デキルダロ？？
ソイツガ、オ前ナラバ、ソレヲ証明シテクレヨ…。
―――そして、俺っちは審神者の腹に刀を突き立てた。
「上手くいったね、薬研」
俺っちの後ろにいた鯰尾に本体を返して、改めて審神者を見た。
直感でいうと"シロ"だが、人間の本性など分からん。
もう少し、もう少し踏み込んでみるか――…。
―――で、呆気なく改心させられた訳だが…
「なら、納得できるね」
そうやって笑った顔は、俺っちに対する恐怖を微塵も感じさせなかった。
いや、実際に怯えることはしなかったんだ。
「薬研」
優しい声に柔らかな抱擁。
その心地良さに、甘えてしまった。
「大将…俺っちは――……っ！？」
『アンタの刀でいいのか』
そう聞こうとした瞬間―――
―――"向こう側にいる刀"と目が合った。
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作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
