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弐拾漆*初対面の刀 ページ28

薬研の気配だけを感じ取るように意識を集中させ、その"気"を追って部屋に走った。


部屋に辿り着くと、そこには3人がいた。

「おぉ大将。随分長いこと走り回っていたみたいだな」

「え……あ、審神者…」

「さ、審神者様っ……」

おやぁ?何か違う子がいる。

1人はフワフワな白い髪でぐったりと力なく項垂れる小虎を抱えていた。

もう1人はマントを羽織った茶髪のおかっぱ頭。

「えぇっと…?」

「五虎退、前田、怖いなら下がってろ。
大将、取り敢えずそこに座ってくれ」

言われるがままに部屋の奥へ行く2人。

薬研は自分の真正面を指差して、座るように促してきた。

言葉に甘えてそこに腰を下ろす。

「それで?あの2人はどうした?」

「それが、見つからなくて……諦めて君を優先しようと思って」

薬研は短く「そうか」と答えると、立ち上がった。

「なら手入れ部屋に行こうぜ。きっとそこに居るはずだ」

薬研の言葉に疑問を持つが、今は大人しく移動しようとした。

だが、奥の2人が声を上げた。

「だ、ダメですッ……!!2人きりに…なったら」

「そうです!薬研兄さん、危険ですよ!」

お互いの手を握り締めて、必死に声を張り上げる2人は何かを覚悟しているようだった。

薬研は顎に手を添えて、やがて2人に顔を向けて微笑んだ。

「なら、一緒に来るか?」

「え……」

薬研の言葉に2人が固まる。

「大丈夫だ。こいつは俺達に危害は加えねぇよ。
俺っちは………そう信じてる」

最後の言葉で、声のトーンが一気に落ちた。

ぞくりと背筋に悪寒が走り、弾かれるように薬研を見上げた。

薬研は私を見ていた。

冷めた表情で確かな殺気を放ち、無表情で私を見下ろしていた。

「ぁ…うん」

懸命に絞り出したのに、言葉はそれくらいしか出てこなかった。

なのに、薬研は安心したように、嬉しそうに目を細めて笑った。

再び奥の2人に目を向ける。

「な?少し睨むだけでこの反応だ。大丈夫だろ?」

少し睨むだけ…??

いや、めちゃくちゃ怖かったけど???

睨んだだけじゃなくて殺気も放ってたよね!?

解せぬ想いをぶつけるように見つけていると、ふと目が合った。

だが、苦笑いで返されただけだった。

2人は渋々といった感じで立ち上がり、ついてくる素振りを見せた。

そして、私と3人の刀剣、計4人で手入れ部屋へ向かう。

2人はかなり距離をとっているけど、気にしないようにする。

弐拾捌*危険な刀→←弐拾陸*薬研、厚、乱



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作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年8月28日 23時

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