【とうらぶ】微力だけど任せてください！！【ブラック本丸】 (ページ46)

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参拾伍＊理想の主ページ46

まだ酸素は足りないが、目の前の刀は私よりも苦しそうにしていた。

だからか、思わず手を伸ばした。

「今剣……大丈夫、だいじょ…ぶ、だから…」

そっと頭に触れると、ビクリと大きく肩が揺れた。

私は小さな体を優しく包み込み、生きていることを知らせた。

残念ながら、今剣の跨っているところは私のお腹。

起き上がることは出来なかった。

「大丈夫だよ……何ともないから、怖くないよ」

「でも、あるじさまの、くびを…ぼくは」

「大丈夫」

腕に力を込めて抱きしめる。

すると、今剣は甘えるように目元を私の肩に押し付けてきた。

「あるじ、さま…」

まだ、泣いているだろうか。

肩が濡れていく感覚があり、密かにそう思う。

唐突に、今剣が力を込めてきた。

「…ごめんなさい」

それだけ小さく呟いたあと、彼のすすり泣く声だけが部屋に響く。

他の人は黙って見守っていた。

その表情は優しいもので、柔らかく微笑んでいた。

心地よい空間に甘えるように目を閉じると、頭の中に何かが聞こえてきた。

『あるじさま…ごめんなさい。こんなぼくを、ゆるしてくれますか？こんなぼくでも、あるじさまは……』

今剣の不安の声かな。

酷く寂しげに、苦しげに聞こえてきた声。

私は今剣の背中をリズムよく叩いて、落ち着くように促した。

「大丈夫だよ。今剣は、ここに居ていい。私の傍にいて。絶対に守るから」

そう言うと、今剣は顔を上げて、笑いかけてきた。

「ぼくは、義経公のまもりがたな。でもいまは、あるじさまのまもりがたななんですよ」

「そうだね、そうだったね。でも、私にも背中を預けてくれないかな」

「…まもれますか？」

「守ってみせるよ。だって…」

私はもう一度だけ今剣の頭に手を置いた。

「私は今剣の今代の主だから」

そうやって微笑むと、今剣の目から1粒だけ頬を伝って落ちていった。

その雫は、私の頬に落ちた。

今剣は、もう泣かなかった。