参拾＊刀の想い ページ31
清光……確か、最初に出会った"赤"が印象的な刀だった気がする。
私の霊力を優しいと、最初に褒めてくれた刀だ。
「…あぁ分かるぜ。でもな、今は耐えてくれや。
分かるからこそ、耐えて欲しい。
兄弟を手入れしてくれるって言ってくれたんだ…
今は小さな希望にも縋(ｽｶﾞ)りたいんだよ、俺っちは」
静かな哀しみを露わにしながら、語りかけるように言った薬研。
私は泣きたくなった。
こんなにも辛い思いをしてきたんだ。
２人の想いが伝わってきて、胸が苦しくなる。
いつの間にか、刀を収めた薬研がこっちを見ていた。
納得してくれたのかと察した私は声を出そうと口を開けるが、上手く出なかった。
代わりに、視界が歪んだ。
「ッ！大将っ…！？」
ギョッとした顔で私の元へかけてくる薬研を不思議そうに見つめる。
そっと手を伸ばしてきたと思えば、その手は私の頬に添えられた。
「何で、泣いてるんだ…？」
「え…」
少し見えやすくなったと思えば、何かが頬を伝う。
瞬きをすればその分、目から零れ落ちる。
「大将…？一体どうしたんだ」
「わ、わからない…何でかな…？止まらなくて…」
自分が泣いていると気づいてから、見られたくなくて両手で顔を覆う。
薬研はきっと心配そうな顔を向けている。
必死に拭おうと腕でこすってみても、とめどなく溢れてくる。
「ごめっ…！わ、私……ごめんね…ッ」
「もういい…もういいから、泣き止んでくれ」
そう言うと、泣きじゃくる私を抱き締めてきた。
私よりも深く傷ついた彼に甘えることはできない。
変な意地を張る私は腕から逃れようと後ろに下がる。
でも、なかなかに力が強くて抜け出せなかった。
ふと薬研の肩越しに、青い羽織りが視界に入る。
その人はただ私をじっと睨みつけていた。
憎しみを孕んだ瞳で――――……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
