Masquerade 6

case 273 ページ37

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『じゃあ……ね。』









「おう、またな。」









前回とは違い、

家の前まで送ってくれた。









車を降りて、見送るためにそこに立った。









「入いんねぇの？」









『え？見送ろうかと……。』









「Aが先に入れよ。」









……宏の瞳は、儚げに揺れる。









顔は確かに笑顔だけど、

その笑顔は表情筋の動いてない……

下手な作り笑顔。









『わかった……。』









私は宏に、背を向ける。









その瞬間、ポロリと涙が頬を伝う。









背中に感じる宏の視線。









私は……振り向かない。









音がして、エントランスのドアが閉まる。









部屋に入って、玄関で崩れ落ちた。









『っく……うぅ……っ……』









恋は、痛いものだと知ってた。









あの日のワイドショーの衝撃は、

今も胸にある。









だけど……









だけど、まさか……自分の恋が、

誰かを傷付けるなんて……

考えたこともなかった。









ー俺のことは宏でいいよー


ー嫌じゃねぇの？ー


ー俺の居場所はなくなんのー


ー俺が隣にいるのに誰を想ってた？ー


ー嘘つきだな、お前ー


ー煙、沁みたか？ー









アイドルスマイルの宏。


オトコの色を滲ませた宏。


仕事にひた向きな宏。


狼の宏。


優しい宏。









色んな宏が、頭の中で甦る。









ごめん……




ごめんね……宏。









宏のことは、人として好きだよ。









でも……私は……









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ー好きだよ、Aー









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あの人の側にいたい───────。

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