Masquerade 6

case 269 ページ33

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ゆっくりと力が緩くなった腕。









あの日と同じ、力強い男の腕。









「バカだな、A。

俺の方が良い男なのに。」









『…………。』









「上がろうぜ、さすがに風邪ひく。」









促されて、海から上がった時には

身体は芯から冷えていた。









宏の持ってきたバスタオルで足を吹いて。









「ほい。」









車に戻って、何故か一緒に後部座席に

乗り込んだ宏に手渡されたのは、

柔らかいブランケット。









え？









重い？









しかも温かい？









違う。









何か、包まれてる？









ブランケットに包まれた何かを

取り出すと……

これ……









『湯たんぽ……？(笑)』









「いやー、日本人はやっぱこれでしょ。」









『ぷっ。あははははは。』









得意気にドヤ顔する宏が可笑しくて

思わず笑ってしまう。









「やーっと笑った。」









宏の表情が一気に柔らかくなって……









『…………。』









「今日、ずっと

ブサイクな顔してたぞ、お前。」









『宏……。』









「なぁ、A。」









『……ん？』









「最後にキスしていいか？」









っ!?









『…………ダメ。』









「ちぇ……。」









口を尖らせて、拗ねたような表情。









ホントに宏は、くるくると表情が変わる。









さっきまで見せてた切なげな表情は、

もう何処にもない。









これも、きっと宏の優しさ。









みんな、私に優しすぎだ。









そう思った瞬間だった。









グイッ









『んっ!?』









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顎を捕まれて、 気が付いた時には









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キスされていた。









それは一瞬の出来事で。









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「ごち。」









ニヤリと笑いながら宏が

自分の唇をペロリと舐めた。

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