Masquerade 6

case 262 ページ22

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ああ、うん、やっぱり。









この人も、そんなに強くなんかない。









きっと私と同じように、

夜の闇とお酒だけに

弱音を吐いてきたような時間が

あったはすだ。









いや、お酒に強くないこの人は、

酔えもせず誤魔化すことさえ

出来ないのかも……。









苦しくても辛くても笑って、

全てを笑顔の裏に封じ込めてきた人だ。









だから、誰よりも優しく笑えるんだ。









急激に愛しさが胸に広がる。









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この人が愛しい。









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不器用だからこそ被り続けた仮面。









その向こうに潜む

無邪気な笑顔をずっと隠して……。









視界がボヤける。









太輔さんの舞台裏を思って涙が出る。









誰にも言わずに独りで

抱えていたのだとしたら……









『っ……っく……。』









溢れ出す涙の止め方がわからない。









だってこの人は、

その痛みに、

たった独りで耐えてきたの……？









「A……何で泣くの……？」









『だって…太輔さんが……

泣かないから……。』









私の声も、太輔さんの声も、

完全に涙声だ。









私が泣いてどうする。









そう思うのに、

太輔さんを想えば想うほど

涙が止まらない。









こんなに素敵で、

こんなに優しくて、

あんなに色んな人に囲まれているのに……

この人は、ずっと独りで……？









「…………ありがと……。」









男同士は、厄介だ。









必ず無駄なプライドが付きまとう。









女同士は、もっと感情的だ。









男同士は、たぶん泣いたりは

出来ないだろうな。









だからきっと、この人は独りで

泣きもせずに封じ込めてきたんだ……。

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