Masquerade 6

case 253 ページ13

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「風下なんかに立ってるからだぞ？」









そう言って宏の親指が

優しく目尻を撫でる。









涙のわけを聞かずに、

煙のせいにしてくれている。









勘のいい宏は、きっと気が付いたはずだ。









私の9年の恋の相手が充だってことに。









それでも、

何も聞かずに私を労ってくれるの……？









ポロポロと零れる涙の雫。









あれから……私、涙腺緩いなぁ……。









外灯と月明りが夜の闇の中で

ぼんやりと映し出す宏の甘くて優しい瞳。









強い色か、

オトコの色か、

酔っ払いの構ってちゃんしか

見たことなかった。









こんな色もするのね……。









沁みたのは、煙なんかじゃない。









沁みたのは、目なんかじゃない。









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心に、宏の優しさが沁みたの。









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「ほい、ラスト。」









宏が私の顔の前で振ったのは、

花火の締め……線香花火。









火の着いた先端が丸い玉を作る牡丹。



玉が激しく火花を発する松葉。



その火花が下向きに垂れ始める柳。



消える直前の散り菊。









『綺麗……。』









二人で肩を寄せ合って、

秋の風が玉を散らさないように壁を作って……

宏との距離が近くなる。









♪〜









宏が線香花火に火を着けながら鼻歌を歌う。









綺麗なメロディライン。









少しだけ鼻にかかった甘い声が、

私を包み込んだ。









最後の花火がポトリと落ちて……

終わりを告げる。









今度こそ……









本当に、









さよなら…………充─────。

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