10 ページ10
.
ゆっくりと伸ばされた手が私の頬を撫でる。
アルコールの影響か、指先の温度が高い。
私を射抜く瞳は、指先同様に熱を内包し、溶けるほどに熱かった。
衝動、というのが正しいのだろうか?
とにかく、目の前の宏光にめちゃくちゃにされたい気持ちが湧き上がる。
触れたい。
触れられたい。
灼熱の瞳で射抜かれて、ベッドに縫い止められて、その燃えるような指先に翻弄されて、感覚の全てがわからなくなるほど。
はしたなくてやらしい私の劣情が空間の温度さえも上げたように、私と宏光の熱が上がる。
─────好き……。
それでも。
ここまできても、声にしようとすると言葉が喉の奥で凍り付いて音にならない。
言いたい。
言いたくない。
言葉に出来ないのは、どうして?
頬を滑るようにその手が動いて、ゆっくりと宏光の親指が私の唇をなぞる。
その瞳に燃えるような欲を宿して。
どうしようもないほどの熱が自分の中でぐるぐると巡って、中心が甘く痺れた。
唇に感じる宏光の指先の感触。
ゆっくりと触れるそれは、さっきレストランのトイレで塗り直したグロスの上を滑らかに行き来する。
「ひろ、みつ……?」
「お前さ……【お風呂が沸きました】
っ、
宏光が何かを言いかけた瞬間、その場の温度にそぐわない無機質な声が響き渡った。
互いにピクンと揺れた肩。
ひとつ溜め息を吐いて宏光は、私の唇から手を離してスウェットを手渡してきた。
「風呂、入ってこいよ。」
「宏光……私……。」
「ダメだ、帰さねぇって。」
「いや、あの……」
「もう、終電ないぜ?」
「っ、」
否とは言わせないような強い瞳が私を見つめる。
そして、その唇が……ゆっくりと確かめるように言葉を紡ぐ。
「……ない、だろ?」
まだあるのだ、終電は。
帰れるんだ、本当は。
でも。
それでも。
帰る手段がないなら仕方ないと、言い訳をさせるために?
なかなか素直にならない私の為?
わからない。
今夜は、宏光にも、私にも必要な言い訳?
面倒な大人になった私……。
少しだけ、そんな自分にも嫌気が差すけれど。
「うん─────……。」
私は、頷いた。
640人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とーか(プロフ) - にかみつばさん» 言葉にしてくださることが、また更に嬉しいです♪私は、みっくんにも少し狡くて不器用なところがあるだろうなって実は思ってまして…Masqueradeの宏があまりにも格好よすぎたので、違う彼を描いてみたかったのも本音です(笑)コメントありがとうございました♪ (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん♪一つ一つに丁寧にコメントくださってありがとうございますー♪そういう率直な感想とても嬉しいです(*´∀`)♪もちろん、好みだと言ってくださるコメントも嬉しいのですが、自分の中の彼は自分が感じるものなので色んな彼がいて当たり前で、それを (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 1人の人を一途に愛する、優しい優しい北山くんで、読んで良かったなと思いました。シリーズで続きを書いて下さりありがとうございました。またとーかさんの作品を読めることを楽しみにしています。長々と失礼いたしました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 兄組話、Masqueradeの北山さんが好きでこちらも読ませて頂きました。正直私の想像する北山さんと違いすぎてイメージや感情移入しずらく途中で断念してしまってました。でもとーかさんの作品だしどうしても気になりラストまで読ませて貰いました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - ふみさん» お姉……。ああ、もう他の人とは違う目線でニヤニヤしてるのが目に浮かぶわぁ……┐(´д`)┌やめれ。生暖かい目で見んなーっ!!!(笑) (2019年9月9日 20時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とーか | 作成日時:2019年8月24日 12時