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「あ、ここで止めてください。」
宏光のその声に初めて外の景色を見て、私の混乱はピークに達した。
そこは───────住宅街……だった。
もしかして。
ねぇ、まさか。
嘘でしょう……?
その住宅街にある、こじんまりとしたマンション。
かなりの築年数が経過しているだろう古いマンションだが、しっかりと管理と手入れがされている。
所謂、バブル期頃に建てられたヴィンテージマンションと呼ばれるものだろう。
バブルの時代は、内装設備共に贅を極めて価格が今では有り得ない値段になっても売れたのだ。
その為、当時に建てられたマンションは、建材も含めてしっかりのものが多い。
「ここ……は……?」
「俺ん家。」
っ、
予測はしていた。
けれど、それだけでは衝撃が軽くはならない。
だって。
今まで、何度もその腕に抱かれてきた。
けれどそれは、いつも生活感が皆無な無機質なホテルの一室だ。
私達は、互いに招いたり招かれたりといったプライベートな空間に相手を介入させたことはない。
でも、ここは……。
完全なる宏光のプライベート空間。
どうあっても今夜、私と宏光の関係は変化するんだろうとは思ってた。
それでも、これは……想像の範疇を超えている。
「ひろ、みつ……」
「……来いよ……」
どうしよう。
どうしたらいいの。
宏光は、私の手を取ってそのまま歩き始める。
管理の行き届いた広いエントランス。
築年数は古くても手が入れられ、静かに動くエレベーター。
沈黙が空間を支配する。
宏光は、何も言わない。
私も、何も言えない。
怖い。
劇的に変わろうとしている関係が怖くなるのは、もう若くはないから。
私がまだ10代なら、期待に胸を膨らませてドキ.ドキも出来るだろう。
でも、もうそれを手放しで喜べるほど若くもない。
女は大人になればなるほど、臆病になる。
それは、恋の傷がどんどん痛手になるからだ。
だから、怖くて仕方ない。
この宏光に期待をして、それが私の勘違いだった時に私は笑えるだろうか。
そんな私の心情を知ってか知らずか、宏光は普段と何も変わりなく飄々として。
カチャリと鍵を開けた。
「ん。」
そのドアを大きく開いて私を見た。
少しだけ、熱を宿した瞳で。
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とーか(プロフ) - にかみつばさん» 言葉にしてくださることが、また更に嬉しいです♪私は、みっくんにも少し狡くて不器用なところがあるだろうなって実は思ってまして…Masqueradeの宏があまりにも格好よすぎたので、違う彼を描いてみたかったのも本音です(笑)コメントありがとうございました♪ (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん♪一つ一つに丁寧にコメントくださってありがとうございますー♪そういう率直な感想とても嬉しいです(*´∀`)♪もちろん、好みだと言ってくださるコメントも嬉しいのですが、自分の中の彼は自分が感じるものなので色んな彼がいて当たり前で、それを (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 1人の人を一途に愛する、優しい優しい北山くんで、読んで良かったなと思いました。シリーズで続きを書いて下さりありがとうございました。またとーかさんの作品を読めることを楽しみにしています。長々と失礼いたしました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 兄組話、Masqueradeの北山さんが好きでこちらも読ませて頂きました。正直私の想像する北山さんと違いすぎてイメージや感情移入しずらく途中で断念してしまってました。でもとーかさんの作品だしどうしても気になりラストまで読ませて貰いました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - ふみさん» お姉……。ああ、もう他の人とは違う目線でニヤニヤしてるのが目に浮かぶわぁ……┐(´д`)┌やめれ。生暖かい目で見んなーっ!!!(笑) (2019年9月9日 20時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とーか | 作成日時:2019年8月24日 12時