ICE DOLL 2

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「ああいうのって……」


思考は回らなくて、何も頭を通らないままにオウム返しに呟いた私に、宏光は顔を上げて私を見上げた。


「ロマンチックな夜景付きのレストランに決まってんだろぉ……」


「……私のこと考えて、今日のお店を選んだの……？」


「当たり前だろぉ……初デートだぞ？わざわざ藤ヶ谷にリサーチしたのによぉ……」


太輔に……リサーチ……？

宏光は起き上がって、私の頬を両手で包み込むように触れた。
そうして覗き込んで私を正面から見つめる瞳。


「なぁ、楽しかった？レストラン、気に入った？」


完全に酔っている宏光。
きっと普段なら表には出さない宏光の裏側。
それが、どうしようもないほど心を煽って鼓動が暴れる。
宏光が。
あの、宏光が。
いつも余裕を漂わせて女の子を翻弄しているようにしか見えなかったあの宏光が。
わざわざ太輔に"藤ヶ谷担の女の子"とデートする場所を聞いたと言うのか。


それは──────……私の為……？


「たのし、かった……よ……？」


「また行きたい？」


「……うん……。」


「俺と、だよ？」


「うん……。」


少しだけ、不安そうに私に問う宏光は見たことのない宏光で。
昨日からそんな姿ばかりを見せられて、完全にキャパオーバーだ。
それでも一緒にいられたのは嬉しかったし、初めて知る宏光の裏側は……なんと言うか、可愛いのだ。

こんな。
こんなにも、私の事を考えていたなんて知らなかった。
もちろん"みんなのみっくん"は普段から可愛いのだけれど、あれは宏光の作られた一部だ。


「んふふふ。良かったぁ……。」


こんな風に瞳を甘やかに細めて笑う宏光は見たことがない。
そうしてそのままゆっくりと近付いて、ちゅ、と可愛いリップ音を立てて触れるだけのキスをした。

っ、……

両手で頬を包み込まれて、宝物に触れるみたいな可愛くて優しいキスが二度三度と繰り返されて。
それがどんどん照れくさくて恥ずかしくなる。

今まで何度もキスはされたはずなのに、こんな中学生みたいなキスが妙に恥ずかしくて堪らない。
いつもなら、このキスは段々深くなって、熱を高めて欲を内包するはずなのに。
そんな空気を微塵も感じさせず、ただ柔らかなキスが繰り返される。
じわじわと侵食するみたいに顔に熱が集まってくる。


「A……かわいぃ……」


「っ、……」


今の宏光には何の打算もなく、ただ思ったままに言葉が紡がれて。
それは、紛れもない本心で。


絶対、今……顔、赤い……

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