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己の心を凍らせていたアイスドールは、宏光にとっても冷たい女だった。
宏光を見つめて、私は言葉を紡ぐ。
「私も愛してるよ、宏光……」
ずっと。
心の奥底に沈めて凍らせてきた想い。
色を失わせ、光を遮断し、仄暗い場所に閉じ込めてきた想いが今、鮮やかに色彩を取り戻す。
愛してる。
愛してるの。
宏光だけを、ずっと───────……。
美しく煌びやかな高い純度を誇る想いの結晶は、気が付けばその輝きに相応しいほどの硬度を誇っていた。
私の言葉を受けて宏光は一度眉根を寄せて、何かに耐えるように唇を噛んだ。
肩を竦ませて、自分を落ち着けるためか吐息を零して、そうして改めて私に囁いた。
「これから、毎日言ってよ。」
「毎日?」
「そう、毎日言って。」
「欲張り……。」
宏光の言葉に笑ってそう言い返してやる。
けれど宏光は私の唇を唇で柔らかく塞いで、そうしてまた言葉を続けた。
「直接でも、電話でも、何ならメッセでもいいから、毎日言って。」
宏光のその言葉に、私は驚いて宏光をまじまじと見つめた。
そんな私をを見つめたままに、宏光は逆に瞳を甘くしてまた私に口付ける。
待って。
嘘。
だって、それは。
確かに好きだと言われたし、言った。
気持ちが通じ合った実感もある。
けれど。
基本的に自由を愛する宏光に、何処まで踏み込んでいいのかもわからないと思ってた。
でも。
毎日と言った。
宏光は、毎日と。
それは、毎日連絡してもいいと言っているのと同意だ。
肩が、指先が、震える。
確かめるように宏光を見つめる視界は、ゆるゆると輪郭を滲ませていく。
「……ばか……」
そう囁いて私は、宏光の額に自分の額をこつんと擦り合わせた。
それに答えるように宏光もすり、と額を合わせてくる。
互いの呼気が唇に触れるような近い距離で、宏光はそっと囁く。
「俺も、毎日言う。愛してるって、毎日言う。」
「…………。」
もう、何も言葉にならない。
宏光の心の中に、自分がちゃんと存在してる。
それだけで。
そっと押し上げられた瞼。
その奥に隠されていた、煌めいた瞳。
宏光はその瞳で真っ直ぐに私を見つめて、そうして笑みをこぼす。
「お前が言葉を…愛をくれたら、俺はまた強くなる。だから……」
宏光は、独りでも強く在るのだと思っていた。
けれどその強さは、半分は虚勢なのかもしれない。
私が見ようとしてこなかった宏光の裏側に、本当は。
「うん───……。」
心から、私は頷いた。
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とーか(プロフ) - にかみつばさん» 言葉にしてくださることが、また更に嬉しいです♪私は、みっくんにも少し狡くて不器用なところがあるだろうなって実は思ってまして…Masqueradeの宏があまりにも格好よすぎたので、違う彼を描いてみたかったのも本音です(笑)コメントありがとうございました♪ (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん♪一つ一つに丁寧にコメントくださってありがとうございますー♪そういう率直な感想とても嬉しいです(*´∀`)♪もちろん、好みだと言ってくださるコメントも嬉しいのですが、自分の中の彼は自分が感じるものなので色んな彼がいて当たり前で、それを (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 1人の人を一途に愛する、優しい優しい北山くんで、読んで良かったなと思いました。シリーズで続きを書いて下さりありがとうございました。またとーかさんの作品を読めることを楽しみにしています。長々と失礼いたしました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 兄組話、Masqueradeの北山さんが好きでこちらも読ませて頂きました。正直私の想像する北山さんと違いすぎてイメージや感情移入しずらく途中で断念してしまってました。でもとーかさんの作品だしどうしても気になりラストまで読ませて貰いました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - ふみさん» お姉……。ああ、もう他の人とは違う目線でニヤニヤしてるのが目に浮かぶわぁ……┐(´д`)┌やめれ。生暖かい目で見んなーっ!!!(笑) (2019年9月9日 20時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とーか | 作成日時:2019年8月24日 12時