before the melody 2-156 ページ28
.
その時。
「ごめん、遅くなった。」
渉さんの声が響いて。
振り向くと、渉さんと太輔が走り込んできた。
「横尾さん……
ごめん、病院内はあんまり走らないでね。」
「あ、ああ、ごめん宮田。で、ミツは?」
「今から送って行くとこ。」
「ミツん家に?意識あるの?」
「いや、さっき一瞬あったんだけど……
ここは嫌だって……
消毒液の匂いがするからって……。」
「……そっか……」
渉さんは苦い顔で視線を落とす。
きっと知ってる。
渉さんも、ミツの心の闇を。
月乃さんへの凍り付いた愛を。
「俺、付き添うよ。」
『私も一緒に行く。』
渉さんが言ったのを受けて、私も返事をした。
行く。
絶対に。
「Aっ!?」
裕太の悲痛な声が聞こえても、
もう私は引く気はない。
あのミツを放っておきたくない。
不意に、私は自分の隣に気配を感じて、
そちらを向くとそこには
ほとんど言葉を発していない太輔が立っていた。
太輔は、ジッと私を見据えて。
『太輔……?』
太輔は、ひとつ溜め息を吐いた。
「渉、連れてってやって。
俺、玉と帰るから。」
!?
「ガヤっ!!」
「玉、いいから。俺と帰ろ?」
少し下を向いて唇を噛んだ裕太に、
太輔は幼い子に言って聞かせるように
肩をぽんぽんと叩いた。
そして。
.
.
「言っても、もう聞かないよ……あの目は。」
.
.
言葉の中に、
私と太輔の時間の長さが溶けていた。
before the melody 2-157→←before the melody 2-155
473人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗羅(プロフ) - お久しぶりです。 以前メッセージを送らせて頂いたものです。とーかさんの作品が読みたくなり読ませて頂きました。初めて前作を読んだ時から言葉運びやお話の展開がすごく好きで心打たれたのを覚えています。忙しいかと思いますが更新待ってます頑張ってください (2018年9月11日 5時) (レス) id: b997b450ae (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - はじめまして。前作から一気に読ませて頂きました、、!とーかさんの文章はすごく綺麗で読んでいてすごく面白いです。続きがとても楽しみです!更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (2018年8月10日 0時) (レス) id: 4a7e4f83bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - とーかさんのファンになりました!とーかさんの書く小説文章がキレイで、読んでいて幸せな気持ちになったりキュンとしたり。。。続きがとても楽しみです♪更新楽しみにしています☆ (2018年5月31日 18時) (レス) id: 150ba412d9 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ - 一章から一気に読みました…!前作も1日で読みきりました。とーかさんの文章は胸が抉られ苦しく締められますが、なによりもとても綺麗です。涙が止まらないほど悲しかなりますが、その中にある温かさを感じ、じーーーんとします。更新頑張ってください!!! (2018年5月26日 23時) (レス) id: e3f41243e4 (このIDを非表示/違反報告)
りなみつ(プロフ) - 一章から一気に読んでしまうほどおもしろかったです!太輔と別れるシーンではぼろぼろと涙が止まりませんでした。トーカさんのお話これからも楽しみに待ってます! (2018年4月17日 10時) (レス) id: c8036a53c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とーか | 作成日時:2017年10月17日 17時