before the melody 2-148 ページ20
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静かな部屋に、
ぽとりと落とされた呟きは
ひどく冷たい音がした。
それは、心の中心を冷して。
ズキッと亀裂を入れた。
胸が痛い。
ミツの、奥さん……。
それは、法的に
ミツの隣に立つことを許された人。
ミツは、柔らかな手付きで
左手の薬指を撫でた。
その手が、
確かに愛しさを語っているはずなのに。
なのに、その瞳は変わらずに闇を映す。
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「もう、他に何もいらないくらい、
愛してた……」
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やだ。
聞きたくない。
誰も必要としないミツが、
独りで闇に沈むミツが、
闇を宿して愛を語る。
「どうしようもないほど……
愛してたんだ……」
『!?』
あ、れ……?
え……?
愛して"た"……?
何で……過去形……?
その手を宙にかざして。
ミツが何もない空間を見上げる。
その先に美しい月を見上げていた……
あの屋上の司祭の時と同じように。
その瞳に、深い闇を称えたままに。
『……ミ、ツ……?』
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「……もう、何処にもいないけどな……。」
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ああ、この闇は。
この闇の深さは。
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ミツの、
愛の、
深さ───────。
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『……亡く、なったの……?』
私の声は、震えて掠れて。
「……ああ……。」
帰ってくるミツの声も震えていた。
その瞳は、私を見ない。
ただ、翳した手を、
その指に光る指輪を見つめて。
恐らくは、何も映していない闇色の瞳が、
消えてしまった命の灯火を探している。
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「俺が、殺した──────。」
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紗羅(プロフ) - お久しぶりです。 以前メッセージを送らせて頂いたものです。とーかさんの作品が読みたくなり読ませて頂きました。初めて前作を読んだ時から言葉運びやお話の展開がすごく好きで心打たれたのを覚えています。忙しいかと思いますが更新待ってます頑張ってください (2018年9月11日 5時) (レス) id: b997b450ae (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - はじめまして。前作から一気に読ませて頂きました、、!とーかさんの文章はすごく綺麗で読んでいてすごく面白いです。続きがとても楽しみです!更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (2018年8月10日 0時) (レス) id: 4a7e4f83bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - とーかさんのファンになりました!とーかさんの書く小説文章がキレイで、読んでいて幸せな気持ちになったりキュンとしたり。。。続きがとても楽しみです♪更新楽しみにしています☆ (2018年5月31日 18時) (レス) id: 150ba412d9 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ - 一章から一気に読みました…!前作も1日で読みきりました。とーかさんの文章は胸が抉られ苦しく締められますが、なによりもとても綺麗です。涙が止まらないほど悲しかなりますが、その中にある温かさを感じ、じーーーんとします。更新頑張ってください!!! (2018年5月26日 23時) (レス) id: e3f41243e4 (このIDを非表示/違反報告)
りなみつ(プロフ) - 一章から一気に読んでしまうほどおもしろかったです!太輔と別れるシーンではぼろぼろと涙が止まりませんでした。トーカさんのお話これからも楽しみに待ってます! (2018年4月17日 10時) (レス) id: c8036a53c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とーか | 作成日時:2017年10月17日 17時