before the melody 2-142 ページ14
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穏やかで優しい人。
差し出されたタオルにも、
その優しさが滲み出て。
消毒液の匂いのするタオルで
涙を拭いながら、私はミツを想う。
本当に良かった……。
泣き続ける私の背中を
裕太の温かい手が擦る。
その視線を、ミツに向けながら。
宮田さんは、
慈愛の瞳で見つめながら採血して。
二階堂さんは、
唇を噛んでミツを苦しそうに見つめる。
ねぇ、ミツ……。
ミツは、どうして……?
宮田さんは、
本当にミツを思って心配してくれてる。
二階堂さんも、千賀さんも。
それから……
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ー 歳は俺のひとつ下なんだけど……
一番心配な奴 ー
透さん。
お兄ちゃんは、
誰よりもミツを案じてた。
渉さんだってそうだ。
こんなに……
これほどに周りに恵まれているのに、
どうして……?
今は閉じられている瞳が、
闇を宿して全てを諦めたような顔をする。
ミツが闇を瞳に宿す時、
その闇は濃く深く。
まるで、そう───深淵の闇のように。
零れ落ちる涙は、
ミツを想って後から後から止めどなく。
この人を、失うかと思った。
初めて感じた、喪失の恐怖。
それは、未だに身体と心の節々に残る。
いつも独りで、闇に沈むミツ。
そのまま、見失うかと思った。
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この人は、
本当に、
狡い──────。
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心配さえもさせてはくれない。
"俺はいい"と
差し伸べられる手さえも全て断って。
ミツは誰の手も取らず、
独りで闇に沈む───────。
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ー俺には……泣く権利なんかねぇ……ー
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いつだって、向けられる背中は、
悲しいほどに─────遠い。
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紗羅(プロフ) - お久しぶりです。 以前メッセージを送らせて頂いたものです。とーかさんの作品が読みたくなり読ませて頂きました。初めて前作を読んだ時から言葉運びやお話の展開がすごく好きで心打たれたのを覚えています。忙しいかと思いますが更新待ってます頑張ってください (2018年9月11日 5時) (レス) id: b997b450ae (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - はじめまして。前作から一気に読ませて頂きました、、!とーかさんの文章はすごく綺麗で読んでいてすごく面白いです。続きがとても楽しみです!更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (2018年8月10日 0時) (レス) id: 4a7e4f83bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - とーかさんのファンになりました!とーかさんの書く小説文章がキレイで、読んでいて幸せな気持ちになったりキュンとしたり。。。続きがとても楽しみです♪更新楽しみにしています☆ (2018年5月31日 18時) (レス) id: 150ba412d9 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ - 一章から一気に読みました…!前作も1日で読みきりました。とーかさんの文章は胸が抉られ苦しく締められますが、なによりもとても綺麗です。涙が止まらないほど悲しかなりますが、その中にある温かさを感じ、じーーーんとします。更新頑張ってください!!! (2018年5月26日 23時) (レス) id: e3f41243e4 (このIDを非表示/違反報告)
りなみつ(プロフ) - 一章から一気に読んでしまうほどおもしろかったです!太輔と別れるシーンではぼろぼろと涙が止まりませんでした。トーカさんのお話これからも楽しみに待ってます! (2018年4月17日 10時) (レス) id: c8036a53c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とーか | 作成日時:2017年10月17日 17時